早川で土砂崩落 県道不通 西山地区96世帯が一時孤立 規制南ア林道迂回路に 3連休、観光に打撃

 16日午後8時ごろ、早川町湯島の県道南アルプス公園線で土砂崩落が発生、約1キロにわたって全面通行止めになった。13~15日にかけて降った雨で地盤が緩んだとみられ、同町西山地区の96世帯約140人と、旅館やホテルなどを利用していた宿泊客約60人が一時孤立。17日に宿泊する予定だった約60人にはキャンセルの連絡をした。県などは、唯一の迂回(うかい)路となる、マイカー規制中の南アルプス林道などを利用できるよう、住民向けに通行許可証を発行した。復旧のめどは立っておらず、旅館関係者は「3連休で宿泊予定客も多いのにどうしたらいいのか」とショックを受けていた。

 崩落現場は早川町役場から北に約12キロの地点。県道路管理課によると、県道西側の斜面が崩れ、約200立方メートルの土や石が道路に流出した。崩落直前には現場近くを走行中の車に落石が当たる被害があった。けが人はなかった。道路から約200メートル上の尾根付近から崩落していることから、復旧作業には時間が掛かるとみられる。県によると、現場周辺では13日深夜から15日朝にかけて、61ミリの降雨を観測していた。

 同地区には温泉旅館や民宿が多く、3連休で夏の観光シーズンが始まる時期の災害に、経営者は頭を抱えた。同町奈良田の白根館では17日に宿泊予定の34人に状況を説明、全員がキャンセルした。18日以降の宿泊客に関してもキャンセルが出ることは避けられない状況という。深沢守社長は「一番の書き入れ時に、とても苦しい」と話した。蓬莱館でも17日の宿泊予定客にキャンセルの連絡をした。

 同地区は高齢者が多く、住民からは不安の声が上がる。同町奈良田の荒居富子さん(64)は「食料はある程度蓄えてあるが、高齢者が突然体調を崩したときが心配。迂回路は、地域によってはとても遠回りになる」と早期の復旧を願っていた。

 西山地区に入るための迂回路となる南アルプス林道と県道南アルプス線は現在マイカー規制中で、一般車両は通行できないことから、県公安委員会などは急きょ住民向けに通行許可証を発行した。地元住民については18日以降、南アルプス署で申請すれば、許可証の発行を受けられる。また、午前5時半から午後6時の通行可能時間を同8時まで延長する措置を取る。

 一方、町は18日から当面の間、南アルプス市芦安芦倉の南アルプス市営芦安駐車場と早川町湯島の西山発電所を結ぶ無料臨時バスを、1日2往復運行することを決めた。観光客や車のない住民に利用してもらう考えだが、南アルプス登山の拠点となる広河原経由の迂回路で、通行には約2時間かかることから、観光などへの打撃は必至だ。

 早川町内では、4月と5月にも土砂崩落が発生、県道が通行止めになり、同町雨畑地区の住民が孤立した。

【写真】土砂崩落により県道が寸断された現場=早川町湯島

(2010年7月18日 山梨日日新聞)

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