北岳のキタダケソウ シカから守れ 標高3000メートルに防護柵 来月から環境省

 環境省は6月から、南アルプス・北岳だけに自生する希少種の高山植物「キタダケソウ」の保護対策に乗り出す。標高の高い山岳地帯の気温が上昇し、シカの食害が後を絶たない。キタダケソウの被害は確認されていないが、先手を打って一部生息地への防護柵の設置を検討している。同省によると、標高3千メートル級の高地で植物を守る取り組みは国内でもほとんど例がないという。

 同省南アルプス自然保護官事務所や市によると、キタダケソウはキンポウゲ科の多年草。氷河期からの遺存種とされ、県のレッドデータブックでは絶滅危惧種の格付け。北岳山頂近くの南東斜面(標高2900~3100メートル地点)の38・5ヘクタールに、10万~15万株が自生していると推定されている。

 同事務所が昨年調査したところ、北岳の標高3千メートル付近でシカを確認。キタダケソウの食害はなかったが、固有種が将来的に被害に遭うことが想定されるため、保護対策に着手することにしたという。

 同省は6月から保護策の一つとして、試験的に防護柵の設置を考えている。設置場所や設置方法などについては「環境への影響に最大限配慮する」(同事務所)としている。

【写真】保護対策に乗り出す北岳のキタダケソウ(南アルプス市提供)

(2010年5月18日付 山梨日日新聞)

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