2008.8.25 News / その他 /

父の願い 北岳へ慰霊登山“代行” 70年前に遭難死の伯父 大阪・大橋さん HP検索で決心

 大阪府岸和田市の大橋千鳥さん(55)が8月中旬、約70年前に北岳のバットレスと呼ばれる急斜面の岩場で遭難死した伯父を弔うため、北岳の慰霊登山を行った。インターネットを検索していたところ偶然、伯父のことを紹介したホームページ(HP)を見つけ、登山を決めた。北岳でHPに書いてあった慰霊碑は発見できなかったが、「伯父が亡くなった現場に出向いて供養したいと思っていた弟である父の願いをかなえることができた」と千鳥さん。達成感にあふれた表情を浮かべていた。

 千鳥さんは、登山が趣味で娘の礼乃さん(27)と出掛けることが多い。情報収集のため南アルプス市芦安山岳館のホームページ(HP)を見ていたとき、「バットレスに眠る大橋君の立墓のために来る」という記述が目に入った。伯父である大橋喜一郎さんの母校の仲間が慰霊登山をした記録だった。

 喜一郎さんは1937年、北岳のバットレスで亡くなった。千鳥さんの父良三さん(86)は当時、北岳を訪れたかったが、家族に反対されて実現しないままになっていた。良三さんから話を聞いていた千鳥さんと礼乃さんは、HPを見て「今夏は北岳に登ろう」と決意した。

 お盆休みを使って北岳に入った2人は、伯父の慰霊碑があるとされるバットレス周辺を歩いたが、碑は見つからなかった。バットレス直下で冥福を祈った後、登頂し、下山。山岳館に立ち寄り、塩沢久仙館長から当時の山の様子や、慰霊碑が落石や雪崩の影響でなくなった可能性があることの説明を受けた。

 帰宅後、2人は良三さんに慰霊登山を報告した。良三さんは「本当にありがとう。肩の荷が下りた」と目頭を押さえていたという。千鳥さんは「また北岳に登ったら伯父を慰めたい」と話している。

【写真】北岳で亡くなった伯父についての資料を読む大橋千鳥さん、礼乃さん親子=南アルプス市芦安山岳館

(2008年8月24日付 山梨日日新聞)

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