希少高山植物の盗掘被害続発 背景にネット上の高値売買 監視限界「モラル頼み」

 山梨県が初めて製作した「レッドデータブック」で絶滅危惧(きぐ)種に指定されたホテイアツモリなどの高山植物の盗掘被害に、県内の山岳関係者が警戒を強めている。本格的な夏山シーズンを迎え、南アルプス市の櫛形山などでは盗掘情報が相次ぎ、17日には県の調査でホテイアツモリ1株が盗まれていることが判明。盗掘が絶えない背景には、希少植物がインターネットなどを介して高値で取引されている実態があるとみられる。山岳レインジャーらが監視を強めているが、自生地は広範囲で完全に防ぐのは困難。関係者は「登山者のモラルに訴えるしかない」と頭を痛めている。

 県によると、県内の高山地域では県高山植物保護条例施行前の約25年前をピークに、アツモリソウやキバナノアツモリソウ、ホテイアツモリなど希少性の高い植物の盗掘が横行。国の絶滅危惧種に指定されているこの3種は、同条例で採取が禁止されている。

 県は毎年、県山岳連盟メンバーを山岳レインジャーに委嘱。県希少高山植物監視員の協力も得て櫛形山や三ツ峠、山中湖など県内4地域を中心に盗掘パトロールを実施しているが、自生地は広範囲で24時間の監視も不可能なため、被害は完全に防ぎきれないのが現状だ。

 今月15日、静岡県裾野市の会社員男性(58)から櫛形山アヤメ平でホテイアツモリ1株の盗掘情報が寄せられた。17日に県などが現地調査したところ、直径約15センチ、深さ約10センチの穴が掘られ、盗まれていたことが分かった。

 県内では昨年6月、南都留郡内の山林でアツモリソウ3株を採取したとして、富士吉田署が種の保存法違反(採取禁止)の疑いで、東京都内の男性を書類送検。98年には山中湖村でアツモリソウ1株を採取したとして、同署が横浜市内の男性を書類送検している。

 約20年前から櫛形山などで監視活動を行っている同監視員の小野邦彦さんは「盗掘や気候の変化などで、櫛形山のホテイアツモリはほぼ絶滅状態。何株かあった場所に翌年行っても見られなくなった」と嘆く。

 三ツ峠山荘主人で同監視員の中村光吉さんは、自生地帯に入り込む不審者をこれまで何度も目撃してきた。同地域では盗掘者からアツモリソウを守ろうと5年前に地元グループなどが柵を設置する対策を取った。

 日本高山植物保護協会(本部甲府市)によると、ホテイアツモリなどラン科の高山植物は万単位の高値で取引されている。最近ではインターネットのホームページなどで売買されるケースも目立ち、「希少植物が容易に手に入る環境」という。遠山若枝事務局長は「監視員の増員など監視体制の強化を図る必要があるが、最終的には入山者のモラルに頼るほかない」と話している。

【写真】ホテイアツモリが盗掘された現場を調査する県職員ら=南アルプス・櫛形山のアヤメ平

(2005年6月18日付 山梨日日新聞)
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