登山計画書 回収箱の管理無防備 「個人情報の悪用心配」 山岳関係者 扱い見直し求める

 個人情報の保護意識が高まる中、山梨県内で登山者が入山する際に、住所や氏名などを記入して提出する「登山計画書」の取り扱いが課題として浮上している。県警によると、ファクスや電子メール、郵送による提出も徐々に浸透してきているが、入山口に設置された箱に入れる昔ながらの方法も多い。しかし箱の場合、鍵が付いていないケースが多く、第三者が簡単に見ることができるという。「振り込め詐欺」など個人情報を悪用した犯罪が相次ぐ中、山岳関係者は「個人情報が守られないと提出者が減ることも考えられる。箱の施錠を徹底するなど取り扱い方法を抜本的に見直すべきではないか」と指摘している。

 県警地域課によると、計画書は遭難が起きた場合、遭難者の緊急連絡先を把握するために任意で提出を求めている。入山口に設置された箱や山小屋に提出するほか、登る山を管轄する警察署へ郵送したり、電子メールで送付するなどの方法がある。箱や山小屋提出分は管轄する警察署が回収している。

 県山岳連盟によると、入山口に設置された箱の多くは鍵が付いていない上、冬場は1カ月以上回収されない場合もあり、提出された登山計画書を第三者が長期間見ることができるようになっているケースがあるという。

 県内は富士山や南アルプス、八ケ岳、秩父など多くの山系を抱え、夏山シーズンを中心に年間数十万人の登山者が入山している。「計画書の提出数は把握していない」(県警)が、相当数に上るとみられている。

 県警によると、これまでに計画書が悪用されたケースは確認されていないという。しかし同連盟の三枝昌彦副会長は「(振り込め詐欺など)個人情報を利用した犯罪が増える中、悪用されないか心配だ」と話す。

 一方、4月1日から全面施行される個人情報保護法では、個人情報の取り扱い事業者に情報の安全管理などを求めている。このため秩父山系の山小屋経営者は、同法の全面施行に合わせ、「万が一、計画書を紛失したり、個人情報が外部に漏れるのが怖い」として、登山者からの計画書の受け取りをやめるという。

 こうした状況を踏まえ、同連盟の三枝副会長は「箱の施錠を徹底するなど個人情報保護への対策を取らないと、登山者の安全を守るという計画書の価値が損なわれるのではないか。計画書を出さない登山者が増えることだけは避けなければいけない」と話している。

 県警地域課は、個人情報保護の対策として郵送や電子メール、ファクスによる送信を勧めている。箱への施錠などの対策については「今後検討していく」と話すにとどめている。

(2005年3月29日付 山梨日日新聞)

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