南アルプス林道 環境保全へマイカー規制

 南アルプスの広河原とふもとを結ぶ南アルプス林道でマイカー規制を実施し、登山・観光客をバスで輸送しようという構想が、地元の南アルプス市で浮上している。芦安地区に乗り継ぎ用の駐車場を整備する方針を固め、山梨交通(甲府市)とバス運行に向けた協議を始めた。同林道は、一昨年から崩落が相次ぎ、山梨県が崩落個所や危険個所の復旧工事中。現時点では今シーズンの通行止め解除の見通しは立っていないが、市は「自然環境保全の観点から、一般車両の通行は規制していくことが望ましい」として、林道の復旧を待って、恒久的なマイカー規制を県に要望する方針。

 構想によると、広河原方面に向かう車を芦安地区に新設する駐車場に止めてもらい、登山客に山梨交通運行の広河原行きの路線バスを利用してもらう。排ガスを抑制し、広河原周辺の環境保全につなげる狙い。

 駐車場整備を計画しているのは同林道の起点から数キロ広河原寄りにある市営施設「南アルプス温泉ロッジ」周辺。同ロッジの一部とテニスコートを取り壊して約7千平方メートル(乗用車約200台分)の用地を確保する。来年度当初予算案に数千万円の費用を盛り込む。

 環境保全と同時に観光振興も視野に入れる。市は駐車場予定地周辺に民間の宿泊施設や南アルプス市芦安山岳館、白峰会館などの市営施設が点在することから、観光面への波及効果も期待。「将来的には一帯を芦安山岳館を中心とした登山基地に育てたい」(同市)という。

 市はこれまでに芦安地区住民と夜叉神観光協会に対する説明会を開催。駐車場整備やバス輸送に対して了承を得た。シーズン中(6月15日-11月5日)に甲府駅-広河原間で路線バスを運行している山梨交通に、駐車場から広河原までの便を設けることを要請。同社は「南アルプス市と県との調整がつき、環境が整えば運行については協力させていただく」としている。

 広河原は、夏山シーズン最盛期には700台近くのマイカーが集中する。河川敷の駐車スペースからあふれた車が路肩駐車されるケースも目立ち、植物の踏み荒らしや排ガス汚染を懸念する声は以前から出ていた。

 1999年には県と芦安村(当時)が広河原の駐車場が満杯になったときにマイカー利用者に乗り入れ自粛を要請、同村中心部の臨時駐車場から路線バスやタクシーに乗り換えてもらう対策を取ったが、思うような効果は上がらなかった。

 県内では、富士山有料道路(富士スバルライン)で93年から夏の一定期間を限定してマイカー規制を導入している。北アルプスの観光地・上高地(長野)では年間を通じて規制している。

 南アルプス林道を管理する県治山林道課は「現在は危険個所の修復工事を進めている段階で、マイカー規制については具体的な検討に入っていない。市から正式に話があった時点で検討する」と話している。

用語・南アルプス林道
 南アルプス市芦安安通(旧芦安村安通)から白根三山登山口の広河原を経て北沢峠までを結ぶ総延長34・1キロの県営林道。芦安-広河原間(24・1キロ)が開通した1962年以来、南アルプスへのアクセス道として登山者や観光客が利用。広河原-北沢峠間(10・0キロ)は一般車両の乗り入れが禁止され、公営バスが運行されている。

【写真】マイカー規制の構想区間

(2004年1月30日付 山梨日日新聞)

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