2015.11.19 News /

迫る冬山、募る危機感 県内遭難死、最多に並ぶ 関係団体、訓練や講座備え急ぐ

 山梨県内で山岳遭難が相次いでいることを受け、本格的な冬山シーズンを前に県警や山岳団体が危機感を強めている。山岳遭難による死者数は今年、平成に入って最多に。県警は啓発活動を強化しつつ遭難者の救助訓練をより実践的な内容にしたほか、県山岳連盟は冬山登山者向けの講座を充実させる。県、県警と日本山岳ガイド協会は今春から、ウェブサイト「コンパス」を通じ登山届を受け付けているが、今夏の富士登山で利用は低迷しており、関係者からは「登山者の安全意識の向上を図るためにも、さらに周知が必要」との声が出ている。

 「命が懸かっているんだ。適当になってはいけない」。18日、笛吹市春日居町の兜山で行われた県警の山岳救助訓練。富山県警山岳救助隊で小隊長を務めた経歴があり、人事交流で今春から山梨県警地域課に所属している飛弾晶夫救助係長の声が響いた。

 訓練は登山者が崖から滑落した想定。県内各署の山岳救助隊員がロープを使った岸壁の降下法や登山者の救助法を学んだ。飛弾係長は「例年より死者数が増加している状況で、より危険度の高い冬山シーズンを迎える。救助隊として、実践的な訓練を積み、迅速で安全な救出ができるように取り組む」と強調した。

 同課によると、今年1~10月に起きた山岳遭難による死者数は23人で、平成になって最多だった2012年1年間に並んだ。こうした中、年内最後の3連休となる21~23日には多くの登山客が各地の山に訪れると見込まれ、各署が主要な登山口や駅で街頭指導を計画、啓発を強化する構え。

 一方、県山岳連盟は来年1、2月に初心者向けの冬山登山教室を開く計画。今シーズンは募集人数を増やし、雪山での歩き方や雪崩から身を守る方法など基本講習に加え、テント泊を体験できるコースも新たに設け、より冬山の厳しさを体感してもらえるメニューにするという。

 同連盟の古屋寿隆会長は「登山は十分な装備と知識、経験が必要。講習を通じ、山がいかに危険な場所か理解してもらいたい」と話す。

 日本山岳ガイド協会によると、同協会が県などと協定を結んだ今年4月以降、ウェブサイト「コンパス」を通じた県内での登山に関する届け出は約5千件。県観光資源課によると、7月1日~9月14日に吉田口登山道から富士山に登った約13万6600人のうち、コンパスを利用したのは221件で登山者の0.16%だった。

 インターネットを通じて登山届を提出できるため、提出率の向上が期待されたが、同課は「周知不足で提出率はまだまだ低い」と分析。「登山計画書を作ることが登山の準備にもつながる。冬山シーズンに向けチラシやホームページなどを通じた広報に力を入れていく」と話している。

 【写真】山岳遭難の救助訓練で岸壁をロープで下りる県警の山岳救助隊員=笛吹市春日居町の兜山

 (山梨日日新聞 2015年11月19日付)

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