2015.5.11 News /

ライチョウの子育て支援 環境省 南アルプス 昼はつきっきり、夜は鳥かご 外敵から24時間保護

 絶滅の恐れが指摘されている国の特別天然記念物「ライチョウ」の減少に歯止めをかけようと、環境省は今夏から、南アルプスでライチョウの子育て支援に乗り出す。ライチョウのひなの半数以上は外敵に襲われるなどして死んでおり、同省職員が7月上旬から約3週間、日中はつきっきりで母子を保護。夜間はケージに収容して外敵や風雨から守る。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」登録に際し、ライチョウは南アルプスの豊かな自然環境を象徴する生物の一種とされており、山梨県内の地元市町村は新たな取り組みの成果に期待を寄せている。

 環境省によると、ライチョウは標高2200メートル以上の高山帯で繁殖。1980年代には国内に約3千羽が生息していたが、現在は2000羽弱に減少している。キツネやカラスなどの外敵が侵入したり、シカなどが餌となる植物を食い荒らしたりしていることが要因とみられ、同省のレッドリストで近い将来に野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧1B類」に指定されている。

 雌のライチョウは6~7月に5個前後の卵を産み、卵は約3週間でふ化する。だが、ひなは外敵に襲われたり、悪天候で体温が低下して衰弱したりして、生後1カ月の間に半数以上が死んでいるという。

 こうした現状を踏まえ、同省は今夏から、ライチョウの母子の子育て支援を始める。同省職員らが7月上旬から約3週間にわたり、日中はライチョウに付き添って外敵に目を光らせ、夜間はシートで覆った木製のケージに収容。ひなが自力で体温を調節し、飛べるようになった時点で保護活動を終える。

 実施場所は北岳と仙丈ケ岳を候補地としており、6月につがいの数を調べて決定するとしている。

 同様の保護活動は2013年から、中村浩志信州大名誉教授が乗鞍岳(長野、岐阜県)で実施。13年には対象となった3家族のひな12羽全てが生後1カ月間を乗り切り、成果は実証されているという。

 エコパークを構成する南アルプスの地元10市町村のうち、事務局を務める南アルプス市ユネスコエコパーク推進室の広瀬和弘さんは「減少しているライチョウの保護活動は非常に重要。エコパークの構成市町村も積極的に情報を提供して、保護活動に協力していきたい」と話した。

 【写真】絶滅の恐れが指摘されているライチョウ

 (山梨日日新聞 2015年5月10日付)

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