2015.3.04 News /

高山チョウの乱獲防げ 南アルプス市 「エコパーク」巡視へ

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録された南アルプスに生息する高山チョウの乱獲を防ぐため、南アルプス市は新年度から、巡視員によるパトロールを始める。南アルプスでは、自然公園法で採取が禁止されている高山植物を守るために環境省などがパトロールをしているが、高山チョウで行うのは初。山梨県側では一部の希少な高山チョウの採取を規制する条例などはなく、コレクターや業者の間で希少種の“草刈り場”となっているため、対策に乗り出すことにした。

 南アルプスには、クモマツマキチョウやタカネキマダラセセリなど希少な高山チョウが生息。長野県は南アルプス周辺に生息する6種類を天然記念物に指定し、文化財保護条例で採取を禁止している。

 一方、山梨県側にはこうした条例はなく、動植物の採取が禁じられている国立公園の特別保護地区(南アルプスではおおむね標高2500メートル以上)以外では採取が可能。市みどり自然課によると、県内の南アルプスでは、コレクターや業者などによる乱獲が相次いでいるのが実情という。

 このため市は、乱獲防止策として独自のパトロール実施を決めた。市内で自然環境の保全活動を続ける「南アルプス市ネイチャーガイド協会」に委託し、生息数が多いとされ、捕獲する人が目立つ広河原や北沢峠周辺などを定期的に巡回する。

 巡回は、登山者が少なくて採取が目に付きにくく、チョウが卵を産み始める4月に開始。広河原に向かう林道南アルプス線の冬季閉鎖が解除となり、多くの登山者が訪れるようになる6月ごろまで行う。

 巡視員は、チョウを捕獲しようとしているのを見つけた場合、採取を控えるよう協力を呼び掛ける。併せて、自然公園法で採取が禁止されている、ミヤマハタザオなど高山植物が採取されないよう監視する。見つけた場合、市や警察など関係機関に連絡する。

 パトロールのほか、県富士山科学研究所の北原正彦特別研究員と連携し、高山チョウ生息の実態調査や、現場での登山者への正しい登山マナーも指導する。

 市みどり自然課の杉山啓子課長は「独自に見回ることで希少種の乱獲の抑止につなげたい」と話している。

 (山梨日日新聞 2015年3月3日付)

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