ライチョウ保護 国が環境整備へ減少要因解明、繁殖技術の確立めざす白根三山「緊急度高い」

 絶滅の恐れが指摘されているライチョウの保護に向け、国が対策に乗り出す。環境省は24日、生息地の環境整備に向けた「第一期ライチョウ保護増殖事業実施計画」を発表。特に減少傾向が著しい北岳など白根三山一帯を「対策の緊急度が高い」とし、調査を通じた減少要因の解明や、飼育された環境で繁殖させる技術の確立などに取り組む方針を示した。南アルプス市などが登録を目指すユネスコエコパークの推薦書では、豊かな自然環境を象徴する生物としてライチョウを挙げており、地元関係者らには「効果的な保護策を講じてほしい」と期待する声が広がった。

 計画は、環境省長野自然環境事務所が専門家の意見を踏まえてまとめた。ライチョウを「自然状態で安定的に存続できる状態」とするため、当面5年(2014年4月~19年3月)の事業の実施方針を定めている。

 ライチョウは、本州中部の北アルプスや南アルプスの標高2200~2400メートル以上の限られた高山帯に生息。1980年代は約3000羽が生息していたが、2000年代には2000羽弱に減ったとされ、特に南アルプス北部の白根三山一帯での減少が著しいという。

 同省によると、ライチョウの減少にはキツネやテン、チョウゲンボウなど天敵とされる野生生物の増加や気候の変化などが影響しているとされるが、はっきりしていない。このため計画には、生息状況の調査と減少要因の解明に取り組む方針を盛り込んだ。

 このほか、幼鳥の生存率を高めるため、簡易ケージでの保護などに取り組むことを明記。ライチョウの仲間でノルウェーに分布するスバールバルライチョウの飼育、繁殖技術を生かし、飼育環境でライチョウを繁殖させる技術の確立に取り組む方針も示した。

 山梨、静岡、長野県の10市町村が登録を目指す南アルプスのユネスコエコパーク推薦書では、ライチョウなどを南アルプスに生息する貴重な動物として例示している。南アルプス市のユネスコエコパーク推進室の担当者は「減少要因がはっきりすれば、効果的な対策が講じられる。市も調査に協力したい」と評価した。

 南アルプスが国立公園に指定された当初から山小屋の管理人を務めている南アルプス市芦安山岳館の塩沢久仙館長は「ライチョウ保護は早急な対策が必要。地元としても全面的に協力していきたい」と話した。

 【ライチョウ】 全長約40センチの中型の鳥。標高2200~2400メートル以上のハイマツ林帯や岩石帯に生息し、主に植物を餌にしている。羽色は夏はほぼ黄褐色だが、冬は全身が白色になる。南アルプスは生息地の南限とされる。国や県の絶滅危惧種に指定され、環境省のレッドリストで、近い将来に野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧1B類」に指定されている。

 (2014年4月25日付 山梨日日新聞)

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