桝形堤防「理解深めて」南アで企画展調査の成果や歴史紹介

桝形堤防の発掘調査などのパネルを展示している企画展=南アルプス・ふるさと文化伝承館

「木工沈床」で使用されたボルト

 南アルプス市野牛島の市ふるさと文化伝承館は、企画展「てっすげえじゃんけ! 桝形堤防、将棋頭、石積出」を開いている。同市の国史跡「御勅使川旧堤防(将棋頭・石積出)」について、構成する桝形堤防の調査成果や歴史を紹介するパネル、初公開の古文書など約50点が並ぶ。担当者は「市の水の歴史を象徴する堤防について理解を深めてほしい」と話している。

 同館によると、御勅使川旧堤防のうち、石積出は御勅使川扇状地全域を守る治水の要となる石積みの堤防。桝形堤防は御勅使川を横断するかんがい用水路「徳島堰」の水門を洪水などから守るために造られた。この水門で分けられた水は将棋の駒の形をした堤防「六科将棋頭」が守る土地へ引き入れられ、水田が営まれた。
 御勅使川旧堤防は治水と利水の両機能を兼ね備えた全国唯一のシステムという。桝形堤防は今年3月、整備工事を終えて一般公開されている。
 展示では、桝形堤防の基礎を守る技法「木工沈床」で使用されていたボルトや、江戸期に洪水被害の復旧工事のために動員を命じた「江戸幕府奉行連署状」などが並ぶ。発掘調査で現在の遺構が明治期の水害後に修築されたことや、史跡整備の様子などを紹介したパネルなども展示している。
 100分の1サイズの桝形堤防の模型も展示。模型は未完成で、10日から来館者がピンセットで石を積んで完成を目指すワークショップを実施する。
 中山誠二館長は、御勅使川扇状地が洪水による甚大な被害に遭ってきたことに触れ、「展示をきっかけに歴史を学び、地域防災について見直すきっかけにしてほしい」と話している。
 12月18日まで。木曜休館。午前9時半~午後4時半。入館無料。

(山梨日日新聞 2024年6月8日掲載)

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