櫛形山のアヤメ 防護ネット生育に効果 保全検討会植生調査 外側は裸地化進行

 南アルプス市の櫛形山アヤメ保全対策調査検討会(大久保栄治会長)は31日、開花数減少が危惧(きぐ)されている櫛形山のアヤメ群落で植生調査を行った。検討会は保護策として昨年設置した防護ネット内について「ほかの区域と比べ株数が多く、成長率も高い」と判断。一方でネット外では野生動物の踏み荒らしが原因とみられる裸地化の進行を確認した。今回の調査の結果、「防護ネットはアヤメの生育に効果がある」との見解で一致した。

 かつて3千万本の群生を誇った櫛形山のアヤメはここ数年で急激に減少。検討会の調査によると、開花数は2007年に約30株、08年は10株程度だった。検討会は昨年、山頂北側の裸山の群落にシカなどの侵入を防ぐネット(縦10メートル、横20メートル)を設置した。

 今回の調査には検討会のメンバー13人が参加。裸山の南東向き斜面に設けた区域で、株数や生育状況などを確認した。ネット内外の100平方メートル当たりの株数を比較したところ、外側約1千株に対し、内側は約2千株だった。ネット内側の数は昨年と比べても増加しているという。

 また、芽の成長にも違いを確認。大きいものでネット外側は長さ15センチ、内側は長さ30センチと2倍の開きがあった。根茎の大きさにも違いがみられた。一方、裸地化が進行していた防護ネットを施してない群落周辺ではシカのふんが数多く確認されたことから、検討会は、シカによる食害や踏み荒らしの可能性が高いとみている。

 検討会は月1回のペースで調査を継続。アヤメが咲くのは例年7月上旬ごろで、開花状況をみて今後の対策を検討する方針。大久保会長は「保護策の効果でネット内では外側と比べ開花の可能性は高い。ただ減少原因は一概に特定できないため、引き続き調査を進めたい」と話している。

【写真】調査区域の植生状況を調べる保全対策調査検討会メンバー=南アルプス・櫛形山

(2009年6月1日付 山梨日日新聞)

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