2010.7.02 News / 芦安山岳館 /

【連載】南アルプス 自然と人[4]

豊かに流れる山の水 登山者潤しふもとに恩恵

白根御池小屋の近くにある水場。透き通った冷たい雪解け水が登山者ののどを潤す

白根御池小屋の近くにある水場。透き通った冷たい雪解け水が登山者ののどを潤す

南アルプスの雪解け水は、山の地層に磨かれ、勢いよく流れ落ちる。初夏でも肌を刺すような冷たさ。登山者の渇いたのどを潤し、疲れた体をも癒やす力がある。

白根御池小屋(標高2200メートル)から御池尾根ルートを少し下ったポイントに幅2メートルほどの沢がある。登山者の水場となっている場所だ。場所によっては、落差2メートルほどの滝のようにもなっている。透き通った水は疲れを吹き飛ばし、水しぶきやせせらぎの音が心を和ます。

静岡市から訪れた高山徹男さん(66)は「冷たくておいしいし、険しい道中で癒やしのスポット」とお気に入りの様子。白根御池小屋でも沢の水を引き、飲料水として提供する。1年を通じて4度前後の水温を保ち、決して濁ることはないという。

白根御池小屋では沢からひいた水が疲れた体を癒やす

白根御池小屋では沢からひいた水が疲れた体を癒やす

南アルプスの水は、ふもとにも多くの恩恵をもたらす。花こう岩に覆われた甲斐駒ケ岳を源流とし、険しい山腹を下る尾白川。日本名水百選にも名を連ねる水の名所だ。北杜市内ではこの水を使って良質の米や日本酒が生み出され、豊かな水資源に引かれて進出する企業も多い。

「自然を破壊することは1人でもできるが、守っていくことは1人の力ではできない」。こう話すのは南アルプス市芦安山岳館長として、また環境省自然公園指導員として、長年豊かな自然を見守り続けている塩沢久仙さん。南アルプスの“番人”は、「あらためて自然の大切さを見つめ直し、これからも共存の道を歩んでいく必要がある」と訴える。

 

2010年7月2日付 山梨日日新聞掲載

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