2010.7.01 News / 芦安山岳館 /

【連載】南アルプス 自然と人[3]

魅力伝える「ファンクラブ」 いちずな思い、一丸で活動

南アルプスに話題が及ぶと、話が尽きない芦安ファンクラブのメンバー

南アルプスに話題が及ぶと、話が尽きない芦安ファンクラブのメンバー 

南アルプスのふもと芦安地区を舞台に活躍するNPO法人芦安ファンクラブ。その取り組みは自然保護にとどまらず、登山者の安全を守る活動など幅広い。南アルプスを愛してやまない人たちが集い、豊かな自然を見守り、山岳文化を紡いでいる。

「南アルプスも変わったよ」「昔のホテイアツモリの美しさは圧巻だったな」。6月下旬、ある山小屋に集まったクラブのメンバーたち。ひとたび南アルプス談議が始まると話は尽きない。旧芦安村時代に住民有志らで発足し、今年12年目。会員は約100人。県外から参加する人も多い。

活動は多岐にわたる。広河原山荘などの山小屋運営、多彩な情報を紹介するファンクラブ通信、魅力を伝える登山教室…。さらにキタダケソウやホテイアツモリなど希少な植物の調査、鳥獣から守る防護柵の設置など、山にはいつもファンクラブの姿がある。

26、27の両日に行った今年のキタダケソウ観察会。風雨に見舞われ、メンバーの心は揺れた。安全確保が第一。だが、「楽しみにしている参加者を何とか群生地まで連れて行ってあげたい」。キタダケソウの素晴らしさを知るがゆえの葛藤(かっとう)。途中で引き返すことも覚悟の上で、北岳山頂近くの群生地を目指すことにした。

山での長年の経験を生かして安全なルート、登山方法を選択。多くの人を群生地へと導き、キタダケソウとの貴重な出合いをもたらした。

2006年7月、老朽化していた北岳にある三等三角点が1世紀ぶりに一新された。一新は同クラブの要望でもあった。国土地理院の作業にメンバーたちが加わり、60キロある標石を山頂へ担ぎ上げた。クラブの熱意から実現したことに、当時、同院担当者は「全国的にも初めての例ではないか」とたたえた。

メンバーの1人、宮下重晴さん=中央市浅利=は「1人では何もできないが、同じ思いを持つ人たちが結束することで、南アルプスのために役立つことができると信じている」と、クラブの思いを語った。

 

2010年7月1日付 山梨日日新聞掲載

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