2008.6.25 News / 自然文化 / 動物・鳥 /

北岳のシカ食害調査へ GPSで生態把握も 山梨県が7月から着手 高山植物の植生破壊拡大

 南アルプス・北岳周辺でニホンジカによる高山植物の食害が深刻化している問題で、山梨県は7月から、北岳周辺に定点調査地点を設け、高山植物や樹木の被害調査に着手する。北岳周辺のシカの食害は部分的に確認されているものの、具体的、全体的な被害状況や範囲は分かっていない。県は「定点調査で被害の全体像が把握できる」と説明。衛星利用測位システム(GPS)を利用したシカの生態調査も同時に行い、食害防止対策を検討する。

 調査は県森林総合研究所と県みどり自然課が7月中旬から実施。南アルプスの広河原、白根御池、北岳、農鳥岳にかけ、「高山植物用」と「樹木用」の調査地点を設ける。

 高山植物用の調査地点は、標高2200メートル余りに位置する白根御池より高所の30-50カ所。県山岳連盟撮影の写真を基に約10年前の植生が分かる場所を選ぶ。1カ所ごと、くいで縦1メートル、横2メートルの調査エリアを定め、生息する植物の種類、株数を把握。定期的に調査に訪れ、食害による株数の減少状況やシカの好みなどを記録する。特に近年、食害報告があるシシウドやシナノキンバイ、ヤナギランなどを対象とする見通し。

 樹木の調査地点は標高約1500メートルの広河原を中心に約20カ所設置する。縦10メートル、横40メートルのエリア内に生えている樹木について、樹皮がどの程度食い荒らされているかなどを定期的に調べる。

 県は「被害把握だけでは今後の防止対策を講じることは困難」とし、シカの行動も調査する。7、8月に北岳で3頭を捕獲し、GPSの発信器が付いた首輪を取り付ける。専門機器で移動状況を把握しながら、行動範囲や季節ごとの移動傾向などを調べる。

 北岳周辺のシカの食害は、県山岳連盟自然保護委員会などが独自調査を実施。標高2320-2750メートルの登山道沿い全域で食害を確認。高山帯に移行する標高2500メートル付近で最も被害が大きかったとする調査結果をまとめ、本来、シカの生息域ではない高山帯などに被害が拡大していることを公表した。

 また信州大教授が、国の特別天然記念物ライチョウの推定生息数が北岳など南アルプス北部で約8割減少したと報告。「シカなどが高山植物を食べて植生の破壊が進んでいることが影響している。南アルプスでの食害対策は緊急の課題」と指摘。地元関係者らは食害の深刻化を懸念、「県などの行政が中心となり、早期に対策を講じるべきだ」と訴えていた。

 県みどり自然課は「来月からの調査で高山域でのシカによる食害の状況を正確に把握し、具体的な対策を考えていきたい」としている。

(2008年6月25日付 山梨日日新聞)
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