2020.7.19 News /

宿泊制限「無計画避けて」

コロナ禍、南アルプス山小屋4割営業
安全呼びかけ、救助に備え

 新型コロナウイルスの感染継続を受け、一部の登山道が閉鎖される山梨県側の南アルプス山系で、公営・民間14施設の山小屋のうち、民間の6施設が今年の夏山シーズンに営業すると決めた。閉鎖されていない登山道から登山者が訪れる可能性があり、登山道の管理や遭難時の救助のために開設する判断をした。ただ、感染予防のため完全予約制となるなど例年とは異なる対応を取るため、関係者は「飛び込み宿泊はできない。安易な気持ちでの登山は控えて」と呼び掛ける。

 「このような状況でも県内外から登山客は訪れるだろう。山小屋が開いていないと、万が一、遭難事故が起きた時に救助が大幅に遅れる」。甲斐駒ケ岳7合目で七丈小屋を経営する花谷泰広さん(43)は、感染が続く中で営業する理由を説明した。

 今夏は南アルプスの広河原に通じる県道と林道が封鎖され、北岳周辺の県管理の登山道も利用禁止に。南アルプス市営の山小屋5施設は休業。農鳥岳、間ノ岳、北岳の縦走ルート上にある民間の山小屋も営業を見送り、休業する山小屋は合計8施設に上る。長野県側の南アルプスでも登山自粛を求め、山系北部の山小屋なども休業する。

 ただ、山梨県は登山そのものは禁止しておらず、南アルプス山系の他の登山道は利用の制限がなく、山小屋関係者は「県道と林道の封鎖を踏まえ、北杜市や韮崎市、早川町から登山する人が増える」とみる。

 七丈小屋は密集や密接を避けるために宿泊は完全予約制にし、受け入れ人数は通常の3割程度にあたる8人、屋外のテント場も20張り30人までに制限。鳳凰山、薬師岳に位置する鳳凰小屋など3施設も受け入れ人数を通常より大幅に減らし、寝具の貸し出しをやめて寝袋の持参を求めるなど対策を講じる。南アルプス市側の夜叉神峠小屋、仙水小屋も今月後半から受け入れを始める方針という。

 鳳凰小屋の担当者は「受け入れ人数を制限するため、採算としては決して良くはない」と吐露。ただ、全面的に登山が禁止されていない以上、登山者が来訪する可能性があり、登山道の簡易な補修や山小屋のトイレの管理などが必要になるといい、担当者は「経営の観点とは別に、登山者の安全を守る山小屋の使命として営業する必要がある」と言う。

 花谷さんは「山系全体で休業している山小屋が多く、例年通りの登山や飛び込みの宿泊は困難」と指摘し、体調の確認とともに無理のない登山計画の立案を呼び掛けている。

(山梨日日新聞 2020年7月19日掲載)

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