県道南アルプス公園線 不通2カ月 山岳観光 低迷に悲鳴 早川町側客足半減 旅館、早期復旧望む

 大規模な土砂崩れで県道南アルプス公園線の早川町奈良田-広河原間が通行止めとなって約2カ月が経過。登山客が減少するなど、南アルプスの山岳観光に影響が出ている。マイカー規制中の県道と南アルプス林道両ルートの路線バス利用者はシーズン当初こそ昨シーズンを大きく上回るペースで推移したものの、土砂崩落を境に前年比2割減に落ち込んでいる。県道の復旧には今後2カ月程度かかる見通しで、客足の回復は見込めず、バスの発着地点となっている早川町の観光関係者は頭を抱えている。

 南アルプスの県道、林道のマイカー規制は7月1日-10月31日の期間で実施。それぞれ早川町奈良田、南アルプス市芦安芦倉の夜叉神峠から南アルプス登山の玄関口・広河原まで路線バスでつないでいる。

 県観光資源課によると、土砂崩落前の7月1-17日の路線バス利用者数は林道が4841人(昨年同期比31・4%増)、県道が1127人(同35・8%増)と好調な滑り出しをみせていた。

 ところが、7月17-20日の間に県道で土砂崩落が発生。県道の路線バスも完全運休となり、両ルートを合わせた7-8月のバス利用者数は結局、26972人(同17・5%減)にとどまり、県道だけでは昨年同期に比べて7割以上の減少となった。

 南アルプスの大門沢小屋の責任者深沢文彦さん(39)は「登山者は目に見えて減った。今年は登山者で満杯になる週末がほとんどなかった」と話す。夏山シーズン中の長雨も影響して、7月を中心に宿泊者数が落ち込んだ山小屋は多いという。

 こうした事態に頭を悩ませているのが早川町内の観光業者ら。南アルプス市側では大きな影響は出ていないが、南アルプス登山の玄関口・広河原までの交通が寸断された早川側では、宿泊施設の利用客が激減している。

 県道は11月から冬季閉鎖期間に入るため、観光業者にとってはマイカー規制期間が書き入れ時だが、同町奈良田の旅館「奈良屋」では客数が昨シーズンに比べて半減。経営者の深沢時雄さん(74)は「夏季は登山客の利用をあてにしての営業なのに、これでは経営が苦しい」とこぼす。

 同所の大家旅館(深沢定富さん経営)は「8-9月は温泉客のおかげで客足も回復したが、通行止めがなければ倍の人数が期待できた」。同町湯島の民宿えびな(佐伯順治さん経営)でも宿泊客数が伸び悩んでいるという。

 県は県道の崩落個所の地盤などの調査を終え、復旧工事に着手した。しかし完全復旧までは2カ月ほどかかる見通しで、冬季閉鎖までの再開通は厳しい状況だ。

 長引く通行止めに、早川町は「町の観光全体のマイナスイメージにつながらなければいいが…」(振興課)と懸念。関係者らは1日も早い復旧を願っている。

【写真上】閑散としたバス停周辺。関係者は山岳観光への影響に頭を痛めている=早川町奈良田

(2006年9月24日付 山梨日日新聞)

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