2006.1.03 News / 自然文化 / 動物・鳥 /

よみがえれ甲斐犬の里 南ア市が支援へ 血統保存 “芦安オリジナル”住民飼育

 「生きた天然記念物」と呼ばれる甲斐犬の発祥の地・南アルプス市芦安地区で、「甲斐犬の里」復興を目指す動きが出ている。かつては狩猟犬として多くの家が飼育していたが数が激減、住民有志による「甲斐犬保存会」も解散した。これに危機感を抱いた元メンバーらが、残った会費で購入した優秀な血統を持つ2匹を飼育。強い足腰を鍛えるとされる山野が入り組んだ芦安特有の環境で「オリジナル」として育て、繁殖と種の保存を目指している。市側も甲斐犬発祥の地という地域ブランド性を重視、支援策を検討する考えだ。

 復興に取り組んでいるのは、同市芦安芦倉の市職員伊井和美さん(46)と同所の山小屋管理人森本茂さん(59)。2匹とも生後1年の雌で、甲斐犬をはぐくんだ山ろくの名前を取り、伊井さんが「南」、森本さんが「アルプス」と名付けた。

 市などによると、甲斐犬は同地区で狩猟のパートナーや番犬として多くの家で飼われていたが、1934年に獲物のカモシカが国の天然記念物に指定された後は飼育者が激減、戦後はほとんど見られなくなったという。

 88年には地元の住民有志が「甲斐犬保存会」を設立。独自に交配を進めるなどしたが優秀な犬が産まれず、2004年10月に解散した。

 しかし、「甲斐犬の里」復興への望みをつないでいこうと、同会は解散と同時に残った会費で2匹の甲斐犬を購入。現在、元メンバーら2人が地区内で育てている。

 甲斐犬の血統は、クマやイノシシなどを追って芦安の山野を駆け回る山犬。伊井さんは甲斐犬の魅力について「柵を設けても飛び越えてしまう驚異的な跳躍力と、『この人』と決めた人にしか懐かない忠実さは、ほかの犬にはない」と語る。

 この2匹を含め、同地区で現在飼育されている甲斐犬は10匹程度。森本さんは「甲斐犬らしいスタイルを維持し、能力を磨くには山野が入り組む地形が最適。市街地では独特の野性味が失われてしまう」と芦安で育てる意義を強調。今後は「優秀な甲斐犬がいれば交配も検討し、発祥の地の復興につなげたい」と意気込む。

 一方、市も今年が戌(いぬ)年であることなどから支援策を検討中だ。石川豊市長は「発祥の地で育てていくことに意義がある。地域ブランドとしてPRするためにも、再び保存会を結成してもらい、運営費を補助していくことも考えていきたい」と話している。

【写真】甲斐犬の「アルプス」(手前)と「南」。「発祥の地」復興に向けた取り組みが始まっている=南アルプス市芦安芦倉

(2006年1月1日付 山梨日日新聞)

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