2004.6.28 News / 登山 / 百名山 / 人物・団体 /

甘利山のツツジ天敵シャクトリムシから守れ 駆除に人海戦術 求む!観光客援軍 保護グループはビニール袋用意

 甘利山のツツジをシャクトリムシから守るため、観光客も一役-。山頂に群生するレンゲツツジの保護グループ「甘利山倶楽部」(横森義隆会長)は、昨年から続くシャクトリムシの大発生などで、花への悪影響や枯死も懸念されることから、観光客を“援軍”とした駆除作戦に乗り出した。訪れた観光客にビニール袋を手に歩いてもらい、ハイキングついでにシャクトリムシを捕まえてもらおうという「人海戦術」。このままでは来年も開花に影響が出る可能性が高く、「原始的な方法だが、少しでも効果があれば」と期待を寄せ、協力を呼び掛けている。

 甘利山は山頂付近に約十五万株のレンゲツツジが群生するといわれ、赤い花が見ごろを迎える六月には多くの観光客が訪れる。しかし「今年の咲き具合は不良」(韮崎市産業経済課)。同課によると、原因としては昨冬積雪がなかったことで冷え込んだ外気の影響を逆に受けやすかったことや、四月末に芽やつぼみが出始めてから氷点下の日が続き、霜が降りたことなどさまざまな原因が挙げられ、県森林総合研究所に詳しい調査を依頼している。

 シャクトリムシの大発生も考えられる原因の一つ。甘利山倶楽部の小林美珠さんによると、昨年、今年と「ヒョウモンエダシャク」などのシャクトリムシが多く見られ、ツツジの葉を食べ荒らしたという。葉がないと光合成して養分が蓄えられず、花を咲かせることができないばかりか、枯死してしまう可能性もある。市によると、甘利山にはミツバチやチョウなど多様な生物がいるため「生態系を狂わせてしまうわけにはいかない」と、農薬の散布などはできないという。

 そこで「少しでもシャクトリムシの数を減らそう」と、6月上旬から同倶楽部メンバーらが中心になって割りばしを片手に1匹ずつ捕まえる駆除作戦をスタート。駐車場付近の遊歩道入り口に「緊急おたすけ隊求む!」と書いた看板を設置。割りばしとビニール袋を置き、訪れる観光客にも虫取りを呼び掛けている。

 平日でも約20人、観光客が多く訪れる休日には30人以上が駆除に参加。「来年こそはきれいなツツジが見たい」などと話しながらシャクトリムシを探している。

 同倶楽部は「甘利山のツツジを守っていくために、できることは何でもしたい」と話し、一人でも多い観光客の参加を願っている。シャクトリムシが羽化する7月末まで、駆除活動を続けていくという。

 一方、塩山・三窪高原でも、ツツジの枝枯れが確認されている。塩山市商工観光課によると、被害は数百株に及び、「花の咲き具合が悪いなど、甘利山と似た状況。韮崎市と連絡を取り合って対処している」(同課)という。

 被害の直接的な原因は断定できていないが、根元付近を虫が食い荒らしたとみられる痕跡もあった。また、シカによる新芽の食害、ササやカヤの繁茂なども確認したという。市は、虫類の特定・分析とともに対策に取り組み、根元付近の風通しを良くするため周辺の草刈りも実施している。

(写真上)シャクトリムシを探す観光客
(写真中)大量発生しているシャクトリムシ
(写真下)食い荒らされたツツジの葉=いずれも甘利山

(2004年6月28日付 山梨日日新聞)

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