2004.6.17 News / 登山 / 人物・団体 /

甲斐山岳会、大正15年の登山記録発見 甲斐駒-農鳥縦走、克明に

 韮崎市本町の柳本光一さん(63)の自宅で、大正15(1926)年に甲斐山岳会が行った南アルプス縦走の参加記録が見つかった。記録者は同山岳会と韮崎の地元山岳会・白鳳会の会員だった栃木県の故森市郎さん。7月に6日間かけ、甲斐駒ケ岳から農鳥岳まで踏破する縦走の様子が克明に記されている。白鳳会員でもある柳本さんは「当時の登山について知る貴重な資料。大切にしたい」と話している。

 記録によると、縦走は甲斐山岳会(1924-40年)の主催。後に白鳳会長となる柳本さんの叔父、経武さん(故人)がリーダーを務めたパーティーには、森さんら県内外の登山愛好家10人が参加した。

 白州町台ケ原から登山道に入り、甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳、間ノ岳、北岳などを経て、早川町の西山温泉に下った。当初は北岳から鳳凰三山へ向かい韮崎市へ下る計画だったが、遭難者の救助などで食糧が欠乏し、変更したと記されている。

 記録は柳本さん宅の仏壇で今年2月に発見。封筒に小さいスケッチブックと一緒に入っていた。あて名は柳本さんの祖父、岩十郎さん(故人)。経武さんが若くして亡くなった際、森さんが当時の記録を岩十郎さんに贈ったらしい。贈呈日は1952年8月。

 スケッチブックは49年8月に来県したときのもので、大月・岩殿山、勝沼ブドウ園、鳳凰三山から見た風景などが描かれている。昭和の台風で変形した南精進ケ滝の元の姿、建て替える前の鳳凰小屋など、貴重なスケッチもある。

 森さんは本名森仁兵。栃木県烏山町で呉服屋を営みながら全国を旅行、登山し、多くの旅行記やペン画、水彩画を残したという。

 柳本さんは「森さんについては祖父から話を聞き、家に絵もあったので知っていたが、記録が見つかって驚いた。白鳳会に所属し、南アルプスに詳しい人の貴重な記録として有効に活用したい」と話している。

(写真上)甲斐山岳会の南アルプス縦走を記録した森市郎さんの原稿。下は1949年のスケッチブック
(写真下)森さんの原稿を見る柳本光一さん=韮崎市本町

(2004年4月1日付 山梨日日新聞)

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