「沢登六角堂」倒壊の危機 シロアリ侵食で14センチ沈下 保存会、修繕費寄付呼びかけ

建物西側が沈下し、丸太で補強をしている沢登六角堂=南アルプス市沢登

 南アルプス市沢登地区で約360年前から伝承されてきた切子を奉納する「沢登六角堂」が倒壊の危機にある。1810年に建てられ、約50年前に修繕工事がされたものの、シロアリの侵食などにより西側が14センチ沈下。「沢登六角堂の切子」は県の無形民俗文化財に指定されていて、六角堂を管理する「沢登切子保存会」と自治会が修繕費の寄付を呼びかけている。保存会の名取守会長は「建物と文化を後世に残したい」と話す。〈戸松優〉

 保存会などによると、沢登六角堂は堂内に聖徳太子像と如意輪観音がまつられた地域の信仰の中心。1590(天正18)年に七ツ内地内にあった建物が1664(寛文4)年に現在地に移され、1807(文化4)年に大火で全焼。3年後に再建された。約50年前には瓦が落ちたり、しっくいが剥がれたりしたことから修繕工事が行われた。
 堂内には、切子の重要なモチーフになっている「麻の葉」模様が彫られた部材が使われ、毎年10月には住民らがつくる切子が奉納されている。奉納される切子細工は「沢登六角堂の切子」として県の無形民俗文化財に指定され、沢登六角堂の建造物は南アルプス市の指定文化財になっている。
 シロアリによる侵食と建物の沈下は2011年に確認されていたが、当時は市道の敷設に伴う地区の公会堂の建設が優先され、修繕費用のめどが立たなかった。丸太3本で支える応急処置がされてきたが、丸太の腐食も進んでいる。
 保存会によるとシロアリの侵食部分や柱、土壁の修繕、取り換え、建物のねじれ修理などをすると修繕事業費は約2800万円を見込む。昨年末に民間財団から300万円の助成金を受けることが決まり、修繕費を確保する見通しが立ったことから、今春、沢登自治区区民らに呼びかけ、寄付を募り始めた。
 南アルプス市は6月補正予算に修繕工事の半額(1419万円)を計上。物価高騰で工事費の増額が予想されることから、自治会員や切子保存会など地元負担金の目標額は1500万円と設定し、地区外からの寄付の協力も求めている。
 修繕工事は10月13日に開催される「沢登六角堂切子祭典」の終了後に着手する予定。

(山梨日日新聞 2025年6月28日掲載)

月別
年別