秋登山 けが、遭難にご用心 紅葉シーズン 早い日没、激しい寒暖差 県内で事故急増 県警が注意喚起
夏山シーズンが終わり、標高が高いエリアを中心に、木々が徐々に色付き始めた南アルプス山系。11日早朝は小雨交じりの天候だったにもかかわらず、麓の駐車場には一足早い紅葉を楽しもうとする登山者のマイカーが約20台駐車されていた。
栃木県から友人2人と広河原登山口を訪れた会社員鈴木知栄さん(50)は毎年南アルプス山系に登り、数年前には道に迷ったこともあったという。今年は2泊3日の計画を立て「山の怖さを実感した経験を踏まえ、雨具や食料などの準備は万全に整えてきた」と話し登山道に向かった。
県警地域課によると、今年9月は18件(前年比12件増)の遭難が発生し、遭難者数は22人(同16人増)。内訳は死者4人(同1人増)、負傷者12人(同9人増)だった。このうち富士山では、14日に7合目付近の登山道で都内の会社員男性(30)、19日には2合目付近で長野県の飲食店経営男性(88)が、心疾患とみられる症状などで死亡した。
10月に入っても12日までに7件の遭難が起きていて、8日には南アルプス・北岳で、千葉県の無職男性(59)が足を滑らせて転倒し、大けがを負った。11日は大月市の馬立山(標高797メートル)山頂付近で、都内の会社員女性(44)が、リュックサックを拾おうとして登山道から約20メートル滑落し軽いけがをした。12日にも大月市の御前山で1件発生した。
中高年や若者の登山ブームが続く中、登山者数は増加傾向で推移している。県や地元自治体などでつくる南アルプス山岳交通適正化協議会は2008年から、南アルプスの登山道に向かう人から協力金を徴収。協力金の徴収額から算出した南アルプスの登山者数は調査を始めた5年前に比べ1.6倍に増えているという。
本格的な紅葉シーズンの到来を前に、芦安山岳館の塩沢久仙館長(70)は「遭難の原因は人それぞれだが、高齢者は判断力や瞬発力などが衰えている。自分の体力を見極めて無理のない登山計画を立ててほしい」と話す。県警地域課は「登山ルートの把握や体調管理など事前準備を怠らず、万全の態勢で入山してほしい」と呼び掛けている。
【写真】紅葉を楽しもうと登山する人たち=南アルプス・広河原
(山梨日日新聞 2013年10月13日付)