2013.6.22 News / 自然文化 / 動物・鳥 /

標高3000メートルでシカ駆除へ 南アルプス、高山帯で初 環境省 希少植物の食害防止図る

 環境省は8~9月、南アルプス・仙丈ケ岳(標高3033メートル)の山梨県側にある小仙丈沢カールで、銃によるニホンジカの駆除を試行する。駆除はこれまで山麓を中心に行っていたが、高山植物の食害や踏み荒らし被害が深刻化していることから、標高3000メートル級の高山帯での駆除が有効かどうかを探る狙い。環境省によると、シカを高山帯で駆除するのは全国で初めて。

 同省によると、シカは比較的標高の低い山林に生息しているが、近年は生息数の増加に伴い生息エリアが拡大。1990年代後半から3000メートル級の高山帯に現れるようになり、希少なアツモリソウをはじめ、ミヤマシシウドやキンポウゲなど高山植物への食害が深刻化している。

 これまでのシカ対策は、シカが集まりやすい麓の越冬地で冬場に駆除するのが一般的で、行動範囲が広がる夏場は効率が悪いとされていた。しかし同省などの調査で、シカの越冬地が多様化していることが判明。駆除をさらに進めるため、シカが高山帯に姿を現す夏場にも実施することにした。

 駆除は登山のトップシーズンを避け、8月下旬から9月中旬に1週間程度実施する。小仙丈沢カールは見通しがよく、シカの目撃数も多いという。餌でシカをおびき寄せたり、カール内に柵を設けてシカを誘導したりして駆除する方法を試す。また、逃げ去ったシカが何日後に小仙丈沢カールに現れるかなども調査する。

 ただ、南アルプス林道の北沢峠から小仙丈沢カールまで徒歩で3時間半かかり、駆除したシカはヘリで搬送するため10頭で約100万円程度の費用が見込まれるなど、人的、財政的な負担は大きい。

 環境省南アルプス自然保護官事務所の担当者は「高山帯でのシカ駆除の定着に向け課題も多いが、高山植物への被害は深刻化している。今回の試行で効果的な対策を見い出したい」と話している。

 (山梨日日新聞 2013年6月22日付)

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