第二の高峰、北岳登山に「魔の時間帯」 下山2~3時間 遭難多発

 富士山に次ぐ日本第二の高峰の南アルプス・北岳(標高3193メートル)で、今年の夏山シーズンの遭難発生件数は17件で過去5年で最多となり、5割超の9件が下山を開始して2~3時間後に発生していることが29日までの県警のまとめで分かった。県警は疲労のほか、帰宅時に利用する公共交通機関の時間を気にかけるなど焦りが要因とみる。南アルプスで秋山登山が本格化する中、県警担当者は「県内には北岳以外にも難易度が高い人気の山はある。下山時に気を抜かないでほしい」と話し、遭難が集中する「魔の時間帯」に注意を呼びかけている。

 県警地域課によると、過去5年の夏山シーズン(7、8月)の遭難件数と人数は、2021年8件(8人)、22年8件(8人)、23年5件(5人)、24年12件(12人)、25年17件(17人)。今年の17件のうち11件が重傷で、6件が軽傷だった。
 14件(82%)は下山中に発生し、9件(53%)は下山開始から2~3時間後だった。発生地にも傾向があり、中腹にある白根御池小屋(標高2236メートル)からの「草すべり」と呼ばれる斜面が続く場所での転倒や滑落が5件(29%)あった。
 北岳では11月まで広河原登山口に通じる林道と県道でマイカー規制を実施し、移動手段はバスや乗り合いタクシーに限られる。県警は下山中の遭難について「疲れだけでなく、交通機関の時間を意識して焦るのではないか」とみる。
 県警は22年から7月中旬~10月中旬の休日、白根御池小屋に警察官3人が常駐して体制を強化。今年からは登山口の広河原インフォメーションセンターの電子掲示板に事故の発生状況を表示し、9月12日からは県警山岳警備安全対策隊が制作した注意喚起の動画を白根御池小屋で放映している。
 南アルプスでは北岳のほかにも、甲斐駒ケ岳や仙丈ケ岳、鳳凰三山など秋に人気の山がある。

(山梨日日新聞 2025年9月30日掲載)

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