貴重な自然守り50年 南アルプス国立公園 シカの食害対策、利用促進が課題

 南アルプス国立公園は2014年、指定50周年を迎える。山岳景観や生息する希少な動植物が評価され、この50年の間には、貴重な自然を守るさまざまな取り組みが進められてきた。南アルプスでは地元市町村が昨年、ユネスコ・エコパークへ登録を申請し、いずれは世界自然遺産への登録も視野に入れる。一方で、シカの食害拡大や、リニア中央新幹線計画の具体化など自然保護と開発をいかに調和させていくのかなど新たな課題が浮上。公園の利用促進と絡み、曲がり角を迎えている。

 南アルプス国立公園は山梨、長野、静岡の3県にまたがり、東西が約15キロ、南北が約50キロと南北に細長い形になっている。日本で2番目に高い北岳(標高3193メートル)など3000メートル級の山10座がそびえる。

 1964年6月1日に指定され、総面積は3万5752ヘクタール。山梨県内では南アルプス市、韮崎市、北杜市、早川町に広がり、県内の面積は1万8286ヘクタールとなっている。

 3000メートル級の山々のほか、北岳にしか生息していないキタダケソウなどの高山植物などが見どころ。仙丈ケ岳や荒川岳では氷河による浸食でできたカールなどの氷河地形を見ることができる。

 南アルプス国立公園は、指定当初は登山者によるごみの投棄や高山植物の無断採取などの自然破壊が問題視されたが、近年はニホンジカが高山帯に侵入し、高山植物への影響が深刻化している。

 「ドーン」-。昨年9月、普段は野鳥のさえずりが聞こえるほど、のどかな南アルプス・仙丈ケ岳(3033メートル)の小仙丈カールに、銃声がとどろいた。環境省は南アルプスで、全国初となる高山帯での銃によるシカの駆除を試行した。かつて高山植物の「お花畑」で埋め尽くされていたカール内は、今ではシカの楽園に姿を変えた。

 同省によると、シカは1990年代後半から、3000メートル級の高山帯に現れるようになり、希少なアツモリソウやミヤマシシウド、キンポウゲなどを食べる被害が目立つようになった。

 駆除は、シカが集まりやすい麓の越冬地で行うのが一般的。しかし、行動範囲の拡大や越冬地の多様化で効果的な駆除策はなく、高山帯で植物に直接被害を与える“実行犯”の駆除に乗り出したのは「最後の手段」(同省)だ。

 シカの食害問題は、南アルプスが生息地の南限とされるライチョウへの影響も懸念されている。ライチョウの研究を行っている中村浩志信州大名誉教授は「ライチョウの減少は天敵のテンやキツネの増加が主な要因だが、将来的にはシカによる高山植物の減少が一番の課題。天敵は解決策があるが、シカ対策はめどが立っていない」と指摘する。

 【写真】北岳=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から

 (山梨日日新聞 2014年1月1日付)

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