2014.12.29 News /

「山の中間管理職」奮闘 南ア“若手”登山家が安全啓発活動 山岳会結成、技術を磨く

 今夏に発足した南アルプス市を拠点とする山岳会「岳心がくじん会」(今村量紀[かずき]会長)が、登山者の事故防止を目的とした登山技術や知識の習得に励んでいる。登山ブームを背景に山岳遭難が増加する中、メンバーは登山技術を磨きつつ、会員以外の登山者への啓発や技術指導を本格化させたい考え。県山岳連盟に新たな団体が加盟したのは約5年ぶりで、同会の平均年齢は連盟の中心世代である40~50代より若い36.3歳。メンバーは「山の中間管理職になる」との思いを胸に秘める。

 同会は南アルプス市や富士吉田市に住む25~42歳の8人で構成。富士山で登山者への安全指導などに当たる「富士山レンジャー」や山岳ガイドをしている人も所属している。7月に発足し、その後、同連盟に加わった。

 山岳会の結成は、会員同士が「危険な登山を何とかしたい」(今村会長)との思いを共有したことがきっかけだ。雨具やヘッドライトを持参しない装備不足、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて知り合い、互いの登山力を知らずに登るグループ…。重大事故につながりかねない登山が広がっている実情に危機感を抱いたという。

 連盟に加盟し、研修会に足を運んで指導的立場となるのに欠かせない技術や知識を習得する。11月29、30両日には岡山県玉野市で開かれた上級指導員養成講習会(日本山岳協会主催)に参加。今村会長と小沢昌史事務局長がザックや専用ネットを使ったけが人搬送の実技などを学んだ。山中では毎週のようにクライミングなどの訓練などを積んでいる。

 メンバーは今後、会員以外にも日々の活動に参加してもらい、より多くの人と登山に関する知識を深めたい考え。冬山ならピッケルやアイゼンの基本的な使い方、夏山なら地図やコンパスの使い方をおさらいするなど、安全登山を後押しする。

 同連盟によると、連盟全体では40~50代が主力で、徐々に高齢化が進んでいる。比較的若い世代でつくる同会の活動について、連盟幹部は「意欲的に研修に参加している。連盟の屋台骨を担う存在になってもらいたい」と期待を寄せる。

 今村会長は「大げさではなく、山では誰かの一言で命が救われることがある。メンバー全員がスペシャリストとなり、山への熱いハートを持って登山者の安全を守りたい」と話している。

 (山梨日日新聞 2014年12月29日付)

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