北杜の登山家「金のピッケル賞」 日本人受賞10人に 難ルート世界初登攀に評価

 未踏ルートの開拓など優れた山岳登攀(とうはん)に贈られ、「登山界のアカデミー賞」とも言われる2012年の「ピオレ・ドール(金のピッケル)」賞に、北杜市高根町の登山家花谷泰広さん(36)らのグループが選ばれた。花谷さんは昨年11月、登山仲間と3人のパーティーで、ネパールのキャシャール(標高6770メートル)の南ピラー(南側の尾根)を世界で初めて登ったことが評価された。日本人の受賞は計10人となり、このうち山梨県在住、出身の登山家が4人を占めている。

 花谷さんは、馬目弘仁さん(44)=長野県松本市在住、青木達哉さん(28)=茨城県つくば市在住=とともに昨年11月6日から12日にかけて、キャシャールの南ピラーを登った。南ピラーはそれまで7隊が挑戦していたが、難易度が高く未踏だったという。登頂成功も世界で2隊目という快挙を成し遂げた。

 花谷さんらは6日にネパールのタンナを出発。5回のビバークを経て、11日午後4時ごろ登頂に成功した。「下界の半分以下の酸素濃度で、疲労も最高潮だった」(花谷さん)と振り返る。

 ピオレ・ドールの授賞式は4月5日、フランスのシャモニーで行われた。花谷さんは「賞にノミネートされた6団体が、いずれも難易度の高い登攀を成功させていたので、受賞できると思わなかった。本当にうれしい」と喜ぶ。

 花谷さんは兵庫県出身。小学5年から本格的に登山を始め、信州大では山岳部に所属。卒業後は登山ガイドをしながら、海外の山を中心に登攀している。07年に北杜市内に移住し、妻と今年1月に生まれたばかりの長男と3人で暮らしている。

 ピオレ・ドールは、アルパインスタイルと呼ばれる少人数、最低限の装備での登頂を重視。テクニックやルートの妥当性のほか、自然環境を尊重しているかどうかも評価の対象となる。県内在住、県出身者では、これまでに甲府市在住の佐藤裕介さんと甲州市出身の天野和明さん、北杜市在住の横山勝丘さんが受賞している。

 (山梨日日新聞 2013年5月3日付)

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