櫛形山トレッキング道整備へ 現地調査で絶滅危惧植物2種確認 南アルプス市「建設に支障なし」

 櫛形山(標高2052メートル)の西側斜面にトレッキングルート整備を計画している南アルプス市から依頼を受けた有識者らは、現地の自然環境について調査し、報告書をまとめた。調査で、計画ルート付近に県のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている植物2種を確認。調査の担当者は、希少種の生息エリアを避けるようルートの一部変更などを求める一方、生物の多様化が図れると整備によるメリットも指摘する。市は報告書の結果を受け、建設に支障はないと判断。既に報告書を県に提出し、建設工事の申請書提出に向け協議を進める考え。

 現地調査は、5~6月に実施。ルート建設予定地を数回に分けて視察した。市が昨年10月に開いた意見交換会に参加した、櫛形山の自然環境に詳しい有識者8人のほか、南アルプス世界自然遺産登録山梨県連絡協議会の学術調査委員5人が立ち会い、希少動植物の生息域やルートの整備方法について確認した。

 報告書によると、調査で計画ルート付近に、県のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されている植物チチブシロカネソウとスルガヒョウタンボクを確認。有識者の1人は、希少種を避けたルートにすることや植物の移植を提案。一方、学術調査委員からは「整備で森に日光が入るようになり、生物が多様化する可能性も考えられる」とした。

 トレッキングルート整備をめぐっては昨年10月、有識者との意見交換会で「環境影響調査をし、保全を前提に利用を考えるべき」との意見が出た。市は「ルート周辺の植生は人工林が中心で絶滅危惧種への影響はないと考え、環境影響調査の必要性はないと判断している」と説明。この整備計画が環境影響評価法に基づく調査の対象にならないため、市は当初から予定した任意の現地調査を依頼した。

 市プロジェクト室によると、トレッキングルートは富士川町の池の茶屋登山口(標高約1850メートル)から南アルプス市のアヤメ平(標高約1900メートル)を結ぶ全長約6.1キロ。市は「報告書の内容を反映させ整備を進めたい」としている。測量調査は実施済みで、2013年中に完成を目指す。

 【写真】トレッキングルート建設予定地に沿って、希少植物などを確認した調査=櫛形山

 (2012年8月4日付 山梨日日新聞)

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