「東洋一」櫛形山アヤメ群落 林業公社調査 縮小の危機? 気候や食害影響把握へ

 南アルプス市の櫛形山などに自生し、東洋一の規模と言われているアヤメの大群落の実態調査に県林業公社が乗り出した。約11ヘクタールに2700万本のアヤメが自生する群落として県の自然記念物にも指定されているが、近年、「数が減っているのではないか」と指摘する声が登山客から相次いでいた。同公社は5年程度の期間をかけ自生数の推移を調べるとともに、別の植物との関係やシカとみられる食害の影響も調べる方針。群落のデータは約20年前に地元の高校が実施した調査結果によるものしかなく、今回の実態把握に関心が集まりそうだ。

 県によると、群落は櫛形山アヤメ平(標高1,900-1,920メートル)が9.13ヘクタール、裸山(1,950-2,000メートル)が2.20ヘクタール。県自然記念物として南アルプス市は旧櫛形町時代から観光名所として広くPRしている。開花のピークを迎える今の時期は、毎年各地から多くの登山客が詰め掛け、眺望を楽しんだりカメラやビデオに収める姿が目立つ。

 しかし、ここ数年、登山者から「アヤメが以前に比べて少ない」との声が市などに頻繁に寄せられるようになった。市商工観光課によると、特に今年は長雨などの影響もあり、両エリアとも花がほとんど見られない状態だという。

 県が自然記念物に指定した2002年当時の資料は、地元の巨摩高自然科学部が1981-83年に行った調査結果がもとになっていて、近年は詳細な調査は行われていない。このため、両エリアのふもとにある県民の森・森林科学館=同市上市之瀬=を管理、運営する県林業公社が六月下旬から実態調査に着手した。

 同公社職員で環境省環境カウンセラーの石原誠さん(47)によると、減少の要因として推測されるのが気象や土壌の変化。このほか、動物の食害や、群落内で増えている高さ1-2メートルのハンゴンソウによる成長阻害が考えられるという。

 調査は、1メートル四方の区域を櫛形山アヤメ平と裸山の群落にそれぞれ4カ所設定。(1)現状のまま(2)ハンゴンソウを伐採する(3)ハンゴンソウを伐採した上で網で囲う(4)網で囲う-の4パターンに分け、ハンゴンソウの繁茂や動物の食害が群落に与えている影響を調べ、比較できるようにした。アヤメの生育状況を含め、各区域の状況を定点観測する。

 食害はシカによる被害と推察されることから、ふん採取などで生息状況を調査する。

 石原さんは「群落を保護していくべきなのか、自然の摂理のままにしておくべきなのか、さまざまな意見があるだろう。今回の調査を行政や市民を巻き込んだ議論のきっかけにしたい」と話している。

【写真】櫛形山アヤメ平に広がるアヤメの群生地。近年は自生数が減少しているとみられている(昨年7月10日)

(2006年7月31日付 山梨日日新聞)
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