甲斐駒開山の祖 小尾権三郎の生涯検証 甲斐・宮崎さん 山岳信仰追い、本に

 甲斐市竜地のコーヒー製造卸宮崎吉宏さん(58)は、甲斐駒ケ岳に初めて登頂したとされる小尾権三郎の生涯を検証した「甲斐駒開山」を出版した。「甲斐国志」「遥かなる信濃」など多くの参考文献や地道な取材を基に、小尾の生涯や甲斐駒の山岳信仰を追った力作だ。

 甲斐駒ケ岳は古来、仙人の集う地として俗世の者の入山が許されないとされてきたが、1816(文化13)年に現在の長野県茅野市生まれの修験者の延命行者鐇弘法印(俗名・小尾)が初登頂したと伝えられる。

 宮崎さんが、甲斐駒ケ岳に初めて登ったのは22歳。以来何度か登る度に、登山道などに並ぶ多くの石碑を見て「険しい岩稜(りょう)を信仰とはいえなぜここまで運び上げたのか」と、神秘性を感じたという。

 開山の祖とされる小尾については「登頂を思い立った真意が文献によって異なることに疑問を感じた」ことが、調査にのめり込むきっかけ。46歳ごろから開山に関する文献を読みあさり、小尾の生まれ故郷などを丹念に取材した。

 開山の様子が詳細に伝えられていないことについては「小尾が『開山について他言すると神罰が下る』と言っていたことが背景にあることが分かった」。また、小尾が開山に弟子を同行させていたことなども見えてきたという。

 宮崎さんは「甲斐駒について調べ尽くしたつもりだが、疑問に残る部分もある。甲斐駒信仰は奥が深い」と話している。

 同書は山梨日日新聞社刊、四六判で定価は2100円(税込み)。

【写真】「甲斐駒開山」を出版した宮崎吉宏さん=甲斐市竜地

(2005年7月18日付 山梨日日新聞)

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