2015.5.02 News /

シカ密集、県土の5% 県が分布推定 富士山、八ケ岳周辺で拡大

 食害で森林や農業に影響を及ぼすニホンジカについて、山梨県森林総合研究所は生息分布の推定結果(2013年)をまとめ1日、公表した。「深刻な影響が懸念される」(同研究所)という1平方キロメートル当たりに41頭以上が生息するエリアは県土の5%を占め、世界文化遺産の富士山や八ケ岳の周辺が含まれる。農林業に加え、希少な植物の食害などが懸念される状況下、8年前との比較でも多くのエリアで生息密度は高まっていて、管理捕獲などの対策強化が求められそうだ。

 同研究所は、ニホンジカの捕獲頭数や目撃数にとどまらず、ふんの数のデータなどを活用して13年の推定分布を算出した。5キロメートル四方のエリアで調べ、1キロメートル四方の分布に計算し直した。これまで、県は捕獲頭数の分布は示していたが、生息分布をまとめて公表するのは初めて。

 同研究所によると、1平方キロメートル当たり41頭以上の生息が推定されるのは、厳格な環境保全が求められる富士山の北麓や八ケ岳、秩父山地周辺。1平方キロメートル当たり20~40頭のエリアを含めると、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録された南アルプス周辺など広範囲に及び、県土の20%程度に上る。

 基礎データが残る最も古い05年は、1平方キロメートル当たり41頭以上のエリアはなく、20~40頭のエリアも1%程度にとどまっていた。今回の推計を行った同研究所の飯島勇人研究員は「ニホンジカは餌のある牧草地と、外敵から身を隠せる森林の両方がある地域を好む。富士北麓や八ケ岳周辺は条件が整い、生息数が多いと予想される」としている。

 これとは別の県の調査によると、県内のニホンジカの推定生息数は13年度が3万4230頭。調査を始めた05年度は2500頭で、その後は増加傾向にある。県や市町村は猟友会への委託などで管理捕獲を行い、13年度は1万1181頭を捕獲したが、「ニホンジカの増加に対策が追いついていない」(県みどり自然課)のが現状だ。

 また、13年度のニホンジカの食害状況をみると、農作物の被害額が4100万円、森林被害額が2億300万円。ニホンザルなどを含む県全体の被害額は5億2700万円で、ニホンジカの被害が46・3%を占めるなど、鳥獣害対策でニホンジカの管理捕獲は課題となっている。

 県は今後、国の法改正を受けて第二種特定鳥獣管理計画を策定。ニホンジカを23年度に半減させる目標を掲げ、対策を強化する方針だ。同課は「生息数分布を踏まえ、ニホンジカの多いエリアで重点的に管理捕獲を行うなど対策に生かしていく」としている。

 (山梨日日新聞 2015年5月2日付)

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