土橋芳次早世の才能 南ア市立美術館 甲府出身、画業を回顧
甲府市出身の画家土橋芳次(1908~38年)に焦点を当てる展覧会「土橋芳次回顧展」(南アルプス市立美術館、山梨日日新聞社・山梨放送主催)が22日から、同美術館で開かれる。29歳で亡くなり、戦禍で作品が焼けてしまったこともあり、残存する作品はごくわずか。今展では遺族から寄贈された作品を中心に、スケッチや新聞挿絵、写真など約60点を展示し、その生涯と画業に迫る。
土橋は貢川村富竹(現在の甲府市富竹)に裕福な地主の一人息子として生まれた。3歳で父を亡くし、祖父に大切に育てられた。県立農林学校(農林高)を卒業後、独学で洋画を勉強し、1933年に第1回東光会展で「果圜の冬」が入選。34年には本格的に洋画を学ぶため上京し、熊岡美彦に師事した。
36年、甲府市内の呉服店で第1回個展を開催し、同年の文展で初入選。37年には第5回東光会展に出品した「お花畑」がM氏奨励賞を受賞した。一方、雑誌「山小屋」の表紙や扉絵、カットなどを担当したほか、南アルプス連合山岳会からの依頼で、日本アルプスの名付け親であるイギリス人登山家ウォルター・ウェストンに寄贈する鳳凰三山の絵を制作するなどし、「山の画家」と呼ばれた。
37年には山梨美術協会の創立会員となり、農林学校同窓会有志主催の第2回個展が開催されるなど精力的に活動していたが、38年2月に急性のがんを患い病没する。1月に長男が生まれたばかりで、若手画家として友人や先輩画家からも飛躍を期待されていた矢先だった。
今展では、旧甲府駅舎に展示され、戦時中は「出征兵士を送る絵」とも称された代表作「お花畑」をはじめ、雄大な八ケ岳を背景に日野春高原の豊かな自然の移ろいを表現した17歳のころの作品や、東光会展での入選作などを紹介。新聞で担当していた連載記事や挿絵、農林学校勤務時代の病理実験のスケッチなども並ぶ。
12月7日午後2時から、矢野さんが土橋の生涯について解説する講演会がある。定員50人(11月22日午前9時半から予約受け付け)。
展覧展は来年2月8日まで。月曜(祝日の場合は翌日)、12月28日~来年1月5日休館。問い合わせは同美術館、電話055(282)6600。
(山梨日日新聞 2025年11月21日掲載)



