2023.2.27 News /

登山者自ら「道」守る

北杜・登山家、整備ツアー企画 来訪多いほど美しい山に

 北杜市の登山家花谷泰広さんが一般社団法人「北杜山守隊」を発足し、荒廃が進む登山道の保全活動に乗り出した。目指すのは、山を楽しむ登山者自らが、登山道の整備に関わる仕組みづくり。今後、整備体験ツアーなどを企画していく。南アルプスが国連教育科学文化機関(ユネスコ)のエコパークに登録され10年となる来年を見据え、花谷さんは「山を楽しむ人が主体となって、持続的に山の環境を守る体制をつくりたい」と意気込む。

 「登山者の踏圧によって草がなくなって、地表を雨水が集まって流れることで登山道の浸食が進みます」。2月に公開した「北杜山守隊」の動画で、花谷さんは登山道整備が急務となっている現状を解説。登山者が本来の道から少し外れて歩くことが荒廃を加速させることにも触れながら、「『誰か』ではなく、皆で山の環境を守っていきたい」と呼びかけた。

 花谷さんは甲斐駒ケ岳の七丈小屋の運営に関わる中で、登山道の荒廃に危機感を覚えるようになったという。2019年の台風被害で荒廃はさらに加速。「個人でどうにかできる状況ではない」と判断し、22年4月、仲間と一緒に北杜山守隊を立ち上げ、活動準備を進めてきた。

 花谷さんが最も問題視しているのは「登山道の保全の仕組みがないこと」。登山道の多くは県や市町村が管理者となっているが、整備まで人手や財源が回っていないのが現状といい、花谷さんは「山を楽しむ当事者が整備に関わる仕組みをつくらなければ、今後、登山道を維持していけない」と訴える。

 地元、北杜市内の山は、来年登録10年となる南アルプスエコパークの一部でもある。花谷さんは「整備に携わった登山者は整備した場所が気になるので再訪してくれる。『人が来るほど美しくなる山』を実現し、活動を全国の山に広げていきたい」と話している。

(山梨日日新聞 2023年2月27日掲載)

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