2004.6.17 News /

安全登山、都内から一歩 山岳事故、今年も9割県外者 県警出張、遭難防止呼び掛け

 山梨県内で首都圏から訪れた人の山岳遭難が多発しているとして、県警は東京都内など県外での啓発活動に力を入れている。今年は山岳遭難の発生件数が過去最多だった昨年の同期を上回り、18日現在で県外の遭難者は全体の9割を占め、その大半が首都圏在住。県警は日帰り登山が可能な交通アクセスの良さなどが影響しているとみている。19、20の両日は、県警担当者が登山愛好者が集う都内のイベント会場で安全な登山を呼び掛けている。

 東京都大田区内で19日に始まった大手登山用品店が主催する販売イベント。同日は安全な登山をテーマにパネルディスカッションがあり、県警山岳救助隊員の飛弾晶夫警部補は「標高の低い山でも遭難が発生している。原因は滑落や転倒などさまざま」と県内の傾向を解説。体力や技術に合った山を選ぶように呼び掛けた。

 登山を始めて3、4年という東京都世田谷区の団体職員野村恵一さん(60)は、自宅から近い山梨を訪れているといい、「1人で登山することもあるので、道迷いを防ぐアドバイスが心にとまった」と感想を話した。

 東京都板橋区の団体役員田坂勝芳さん(74)は登山歴50年以上のベテラン。「経験におごりがあってはいけない。今回のように講演などを聞き、山に対する心構えを改めるようにしている」とした。

 県警地域課によると、県内は18日までに山岳遭難が38件発生し、遭難者は41人。前年同期を4件、3人上回る。県外在住者は37人で、首都圏6都県(茨城県を除く)の在住者は26人で7割を占める。

 山系別にみると、南アルプスが最多で19件、次いで大菩薩・道志が12件などで、南アルプスは前年同期の約3倍、大菩薩・道志は約1.7倍に上る。原因は滑落が15件、道迷いが11件などで、道迷いは昨年を8件上回る。

 同課は東京都や神奈川県に隣接し、電車や車で訪れやすいため、登山人気を背景に県内を訪れる登山者が増えていると分析。近場であることに油断し、登山コースの下調べや装備が不十分な登山者も増えているとみる。

 県警は本格的な夏山シーズンを控え、20日も同じイベント会場で遭難防止のポイントなどを記したチラシを配り、休日は山梨県内の駅前などで啓発活動に力を入れる。

 同課の細田茂樹次席は「今後も首都圏に向けた情報発信を強化し、遭難件数を減らしたい」と話している。

 【写真】来場者に安全な登山を呼び掛ける県警の担当者(左)=東京都大田区

 (山梨日日新聞 2017年5月20日付)

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