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2003.3.13 所属カテゴリ: 南アルプス / 自然文化 / 地質・火山帯・地下水 /

フォッサ・マグナ

 中央地溝帯とも呼ばれ、日本列島を東西に分ける大きな構造地帯。本州を横切り、山梨県を含めて南北に続いている。この構造地帯の西縁は、新潟県糸魚川から松本を通り、山梨県の早川にほぼ沿って走り、静岡に至る「糸魚川―静岡構造線」と呼ばれる比較的明りょうな大断層帯によって境され、その西側には新第三系以前の古期岩類が分布する。東縁は新第三系以後の新期岩類によって覆われるため明りょうではないが、利根川沿いの地帯(利根川構造線)から柏崎付近に通ずる線をもって境されているようである。この中間部がフォッサ・マグナで、山梨県は南部地帯にあたるため南部フォッサ・マグナと呼ぶ。

 新生代新第三紀中新世には現在の御坂山地、巨摩、道志、秋山山地や富士川流域などで、沈下する古期岩類上に、海底での激しい火山活動のたい積物を主とした御坂統および砕屑(さいせつ)岩を主とした富士川統の厚い地層がたい積した。その厚さは1万メートル以上と考えられ、岩石は主として玄武岩、安山岩、緑色凝灰岩、凝灰角れき岩、石英閃緑(せんりょく)岩、泥岩、砂岩、れき岩などである。その後、第四紀になって黒富士、南八ケ岳、小御岳火山、古富士火山、北八ケ岳、新富士などの陸上火山が噴出した。

 第四紀の岩石は玄武岩、安山岩などの溶岩流と安山岩質火砕流、泥流、未凝固の砂、れき、粘土、ロームなどで南八ケ岳、北八ケ岳、小御岳、古富士などの火山は更新世に噴出、黒富士、韮崎泥流、高位段丘などは更新世前期から中期ごろに、中位段丘、中・新期ローム層などは更新世後期ごろにそれぞれ形成された。また、この間地殻変動や浸食作用も並行して進み、現在のように複雑な地形・地質を呈するに至った。

 富士火山はだいたいこのフォッサ・マグナの割れ目に沿って噴出しているし、九州方面からの中央構造線も茅野市付近で合流している。

 このフォッサ・マグナはかつては大きい海峡であり、ここを境にして現在でも分布している植物に違いがあるということを言いだしたのは、東京大学の前川文夫博士であった。前川博士によればカンアオイの仲間を例にすると、フォッサ・マグナの東にはタマノカンアオイ、西側にはカギガタアオイがあり、その中間地帯の火山地域にはアマギカンアオイがあるとしている。植松春雄は前川博士の指導のもとにこの研究を進めたが、フォッサ・マグナから概して西日本にあるものはテバコモミジガサ、イワユキノシタ、モチツツジ、イワナンテン、イワザクラ、ヒメシャラ、マルバノキ、コハクウンボクなどであり、中間の富士箱根地域やフォッサマグナの溝にはハコネコメツツジ、アシタカツツジ、フジアカショウマ、イボタヒョウタンボク、ヒメスミレサイシンなどが目立つことを提唱した。