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高山植物

 高山では、その山ろくから山頂に至るまでに生えている植物が順次移り変わる。たとえば山頂に近い所にはハイマツや小型の草本が生えているが、山ろくにはアカマツ、クヌギ、モミなどが生えている場合が多い。一般に中部日本では下から順にクリ帯、ブナ帯、シラビソ帯、ハイマツ帯、お花畑の順に植物帯が整然と移り変わっていくことが多い。この場合のハイマツ帯は中部日本では標高2,500メートル以上に出来上がることが多い。このハイマツ帯の上部にはお花畑が形成され、高山帯とも呼ばれる。高山植物というのは本来の中心的生育地がこの高山帯にあるもののことである。植物は種子でその分布を拡大するものが多いので、この高山帯に分布していたものも、より低い分布帯にまでその種子をとばして適応生育することがある。しかし、この場合はこれらの植物の本来の生活本拠は高山帯であるので、これも高山植物と呼ぶことができる。高山帯に生育するものには、オオバコのように登山者の持ち込んだ帰化植物もある。このようなものは当然、高山植物とは呼べない。高山帯に分布するもののすべてが高山植物であるとはいいきれない。したがって高山帯を分布の本拠としているものが高山植物なのである。

 このような高山植物の多くはその起源が第四紀洪積世の寒冷な時代と関係がある。この時代には日本列島も寒気候に支配されたため、北方寒地の植物が南下してきた。暖気候になった現在でも高山帯に残存もしくは適応変型して現在、高山植物と呼んでいるものとなった。従って高山植物の多くは地球の地史や気候の変遷などとも関係をもって分布していることとなる。山梨県の高山帯にはキタダケソウ、キタダケヨモギ、キタダケデンダ、タカネシダ、クモイカグマ、コケモモ、フジハタザオ、トウヤクリンドウ、キバナノコマノツメ、ヒナコゴメグサなどの高山植物があって美しいお花畑をつくる。

 お花畑にも雪渓などのある水湿地を好むもの、南アルプスの山頂に展開される乾燥性のもの、両者の中間にあたる中性お花畑などがあげられる。県内のお花畑は、そのほとんどが乾性か中性であるといってよい。県内には日本一の高山である富士山、第2位の北岳をはじめとして高山植物の生育地が各地に目立つ。特に北岳を中心とする南アルプスの山岳地では地質も古く、寒冷時代の残存(遺存)植物を多くもつ地域として注目されている。北岳、仙丈ケ岳、間ノ岳を中心にする特産種のほか、ミヤマオダマキ、タカネシオガマ、ハクサンチドリ、オヤマノエンドウ、八ケ岳のやや湿性地を好むコマクサ、富士山のムラサキモメンズル、フジハタザオ、金峰山のトウヤクリンドウ、キバナノコマノツメなど、保護すべきものが多い。この保護のため山梨県では高山植物保護条例を制定している。