2022.6.02 News /

北岳の希少種 芽で保存

森林総研、増殖へ新技術

 山梨県森林総合研究所(富士川町最勝寺、倉本洋所長)は、北岳の特産種で絶滅危惧種のハナシノブ科の植物「ミヤマハナシノブ」を増殖し、保存する技術を開発した。ミヤマハナシノブはシカの食害や園芸用の採集により個体数が減少しており、種の保存に貢献することが期待されている。

 ミヤマハナシノブは北海道と本州中部(北アルプス、南アルプス)の草原に生える多年草。南アルプスの北岳周辺や北アルプスの清水岳で見ることができる。環境省のレッドデータブックでは、絶滅の危険が増大している「絶滅危惧2類」に指定されており、近年はシカの食害や採集により個体数が減少している。

 こうした状況を受け、研究所はミヤマハナシノブの保護に乗り出した。北岳の自生地から種を採取し、殺菌して無菌状態にした上で発芽。発芽したミヤマハナシノブを、植物ホルモンなどを含んだ「培地」と呼ばれる固体を入れた試験管内で保存することに成功した。20度で、5千ルクスの明るさで16時間照らして芽の状態を維持している。

 試験管内で育てた7、8本を屋外に植えたところ、半分近くが透き通るような青色の花を咲かせたという。研究を担当する同研究所の西川浩己主任研究員は「(増殖と保存について)うまくいっていると言える」と言う。

 自生地に近いところで苗をつくるため、芽を含んだ組織をカプセルで包んだ「人工種子」も開発。今回をモデルケースにして、他種への応用も検討する。西川主任研究員は「どの植物も貴重な財産。将来的にどんな価値が出てくるか分からない。今あるものは技術で残せるようにしたい」と話していた。

(山梨日日新聞 2022年6月2日掲載)

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