2021.6.26 News /

山の天気「深読み」を

 山開きの時季を迎え、本格的な夏山シーズンが到来した。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け全登山道が閉鎖された富士山や、公営の山小屋営業を見合わせた南アルプスなどでも、今季は対策を徹底しながら再開する施設が多い。登山を安全に楽しむには天候の見極めが欠かせない。自身も登山愛好者である日本ネットワークサービス(NNS)気象情報室の気象予報士宮田雄一朗さん(29)に、天気の観点から登山の心構えを聞いた。

 中高年を中心に続いている登山ブーム。遭難件数は高水準で推移している。警察庁によると、今年の大型連休期間(4月29日~5月9日)には全国で157件の山岳遭難が発生。山梨県内でも1人が死亡し、負傷者も1人出ている。

 宮田さんによると、今年の大型連休は、この時期としては強い寒気が日本上空に流入していたといい、「天気が急に崩れるなど遭難に少なからず影響したのでは」と推測。気象が原因の遭難は「常に最新の気象情報を確認することで減らすことができる」と強調する。

背景を把握
 テレビのニュースなどでキャスターが解説する気象情報は、主に平地の天気を対象にしている。山の天気は気圧や気流の影響で平地以上に変わりやすく、崩れ方も大きい。そのため宮田さんは「画面上の天気マークをうのみにして山に行くのは危険。天気変化の背景を把握することが大切」と警鐘を鳴らす。

 天気予報で「晴れ」の予報が出ていても、天気を崩す要因がないかを確認する。「上空に強い寒気が入る」と説明があれば山の上は気温が下がり、時期によっては雪の可能性も出てくる。「暖かく湿った空気」なら雨が降りやすくなる。「まだら模様に混在する天気を一つや二つのマークに集約するのは困難。マークは答え合わせ程度と考え、ぜひ要因に目を向けてほしい」

風にも注意
 山登りの参考となる情報は、一般的な天気予報からは得にくい。宮田さんは気象庁の概況文や、上空の状況が分かる高層天気図が見られるサイト、雲や雨量の動きが分かる「GPV気象予報」などを確認することを勧める。一部有料のものもあるが、山の天気予報に特化した専門サイトやアプリなどを活用することも考えよう。

 遭難を防ぐためには風の情報も大切だ。遮るものがない山の上は風の影響を受けやすく、風速15メートル以上になると真っすぐ歩くのも困難になるという。

 休日は登山に行くことが多いという宮田さん。山梨の山について「低いものから高いものまで、天気の状況によって選択できる幅が広い」と魅力を語る。その上で「気象に関する情報は積極的に調べることが重要。背景を知っていれば臨機応変に対処できる。天気が崩れる要因がある時は、決して無理はしないで」と呼び掛けている。

(山梨日日新聞 2021年6月26日掲載)

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