2019.6.13 News /

山ガール、助ける側に

南アルプス署25歳巡査、初の女性山岳隊員「同性の遭難者ケア」

登山者に安全登山を呼び掛ける千野真実巡査(右)=南アルプス市芦安芦倉

登山者に安全登山を呼び掛ける千野真実巡査(右)=南アルプス市芦安芦倉

 南アルプス署の千野真実巡査(25)は、女性で県警初の山岳救助隊員に任命された。訓練や安全登山の啓発活動に取り組んでいて、今後は遭難者の救助に当たる。学生時代は北岳や富士山などの豊富な登山経験を持つ「山ガール」。「遭難の危険を身近に感じ、助ける側になりたい」として自ら志願した。登山ブームを背景に女性登山者が増える中、「きめ細やかな対応で遭難者の心のケアに当たる必要がある」。遭難者に寄り添った山岳救助を心掛けるつもりだ。

 「登山届の提出にご協力をお願いします」。4月27日早朝、南アルプス市芦安芦倉の夜叉神の森登山口。遭難事故防止のため、登山者に安全登山の啓発活動を行った山岳救助隊員らの中に、千野さんの姿があった。

 山岳救助隊は県内の各署に設置され、遭難者やけが人の救助のほか、安全登山の啓発、地元山岳関係者との連携強化などに取り組んでいる。女性が隊員を任されるのは千野さんが初めてだ。

 中学時代から体力づくりや気分転換の一環として、山梨市の乾徳山などに年1、2回ほど登山に出掛けた。本格的に登山を始めたのは大学時代。富士山や北岳、鳳凰三山などの名峰に登り、夏山シーズンで多い時には週1、2回ほど登山することもあった。

 「登っている間は無我夢中。同じ山でも登る度に新たな魅力を発見し、また登りたくなる」。山の魅力を楽しむ一方で、装備が十分ではない登山者や実際に救助される人の姿を度々目にしてきた。

 2018年9月に南アルプス署に配属。女性の山岳救助隊員が一人もいないことは知っていた。「私がいれば、女性遭難者の助けになることができる」。入隊を志願し、今年4月に任命された。配属後は男性隊員とともにロープワークや降下訓練などに取り組んでいる。

 同署の内藤伸治地域課長は、千野さんについて「人一倍努力家。遭難者の役に立ちたいという思いが誰よりも強い」と評価する。千野さんの姿勢に影響を受ける隊員も多いといい、「今後は地上部隊として男性隊員とともに救助に向かうほか、女性遭難者の心のケアにも当たってほしい」と期待している。

 管内は標高国内2位の北岳など南アルプスの山々を抱え、昨年発生した山岳遭難事故は25件と県内12署で最多。発生件数は前年と比べて減少したものの高止まり状態で、ほとんどが北岳での遭難事故という。

 本格的な夏山シーズンを前に、同署は山岳指導の強化や関係機関と連携した訓練を予定している。千野さんは「技術を磨いて隊員や遭難者に頼られる存在になりたい。遭難者の心に寄り添い、登山者に安心を与えられる隊員になりたい」と話している。

 (山梨日日新聞 2019年6月13日掲載)

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