2019.2.08 News / 芦安山岳館 /

【ルポ】冬の遊歩道魅力発見

芦安「瀬戸千段の滝」ツアー記者同行

 昨年再整備された南アルプス市芦安地区の遊歩道を歩き、御勅使川上流部にある「瀬戸千段の滝」を目指す冬のツアーが行われた。地域の隠れた見どころを掘り起こし、観光資源として活用する試み。近隣の集落も散策し地域の歴史を学んだ。山梨日日新聞記者も同行して魅力を探った。

 ツアーはNPO法人「芦安ファンクラブ」(清水准一会長)が実施した。遊歩道は御勅使川に架かる瀬戸大橋付近から始まる。20年ほど前の旧芦安村時代に整備されたが、荒廃が進んでいた。同法人が昨年8~10月、階段を造り直すなどして利用できるようになった。

 雪がちらつく1月26日の午後、芦安山岳館に県内外の約20人が集合した。車で遊歩道入り口まで移動し、滝の歴史について模型で説明を受けた後、アイゼンなどを装備して2グループに分かれて登り始めた。

 遊歩道は落ち葉に覆い尽くされていて、滑らないように慎重に足を運ぶのだが、再整備で設置された手すりや鎖は欠かせない。「ここから狭くなるから気を付けて」。同法人メンバーが時折声を掛けてくれた。「のぞき見の滝」「三段の滝」を経て、入り口から20分ほどで瀬戸千段の滝展望台に到着した。

 落差が約300メートルあるという滝のうち、目線は下から100メートルほどの高さ。所々氷に覆われ、切れ目からは水がさらさらと流れ落ちる。自然がつくり出す景観に、しばらく目を奪われる。「凍った滝も風情があるね」。参加者は記念撮影を楽しんだ。約10分の滞在後、Uターン。下りは特に慎重に足を運び、登り以上に力が入った。

 遊歩道入り口まで戻り、車で数分の距離にある大曽利、沓沢の集落へ。道祖神の特徴といった地区の民俗や歴史、早川町奈良田地区との交流などについて解説を受けた。沓沢地区の集会場では、参加者に温かい紅茶と干し柿を振る舞ってくれた。冷えて疲れた体に染み、心も解きほぐしてくれるような甘さだった。

 東京都江戸川区西葛西の主婦上田佳代子さん(68)は友人2人と参加。「巨大なつららのような滝の姿や、地元の方の温かいもてなしに感動した。芦安が多くの人に愛されていることが伝わってきた」

 同法人メンバーで芦安地区を拠点にしている地域おこし協力隊の中島紫穂さん(45)は「遊歩道を観光資源として活用していきたい。地元の方にガイドを依頼するなど地域と連携できるツアーもできれば」と話す。2時間半ほどの「小旅行」だったが、芦安地区の自然と人々の温かさに触れることができた。

 同法人は「冬季は雪が降り、凍結している場所もある。滑り止めなどをしっかり準備してほしい」としている。

(山梨日日新聞 2019年2月8日付掲載)

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