2004.6.17 News / 自然文化 / 動物・鳥 /

県、ライチョウ保護へ生息調査 国、専門家とチーム 減少の原因を究明 南アルプス北部地域 生態系、細菌有無も

 山梨県は本年度、南アルプス北部地域(白根三山、鳳凰山、仙丈ケ岳、甲斐駒ケ岳)で、国の特別天然記念物「ライチョウ」の本格的な生息実態調査に乗り出す。北アルプス地域と並び国内の代表的生息地である南アルプス北部地域は最近、生息数が激減しているとの報告があり、県は国や専門家とチームをつくり個体数の確認や減少の原因を究明する。現時点ではニホンザルやニホンジカの高山帯への進出が原因に考えられているため、こうした動物の生息実態も調べながら生態系の変化を中心に調査する。細菌汚染調査や遺伝的評価も視野に入れていて、多方面から原因を調べ保護対策に生かす。

 県みどり自然課によると、1970-80年代の県の調査などでは国内のライチョウは約3,000羽で、県内の南アルプス地域には約700羽が生息していると推定されていた。

 しかし昨年9、10月に信州大の研究グループが調べたところ、主な生息地だった白根三山では姿がほとんど確認されず、30年前には見られなかったサルやシカのふんが多数見つかった。このためサルやシカなど新たな侵入種によりライチョウが襲われたり、ライチョウのえさとなる植物を食べてしまうことから生態系が変化した可能性がある、との報告をまとめている。

 また、ほぼ同時期に県が希少野生生物調査の一環として北岳周辺を調べたが、「ライチョウの鳴き声を1回は聞いたが、姿を見ることはできなかった」(同課)という。こうした状況を受けて県は、環境省と協議を進め実態調査を行うことになった。

 計画では、5月中に鳥類の専門家をはじめDNAや細菌の専門家、ほ乳類や植物の生態の専門家などを中心に「南アルプス高山帯生態系調査検討委員会」(仮称)を設置。調査内容や方法の詳細を詰める。

 現時点では(1)生息範囲や繁殖状況を確認(2)遺伝的評価と細菌汚染状況の確認(3)ニホンザルやニホンジカの生息範囲と、高山植物の食害調査-などの手法が考えられている。

 ライチョウの生息調査は繁殖期となる6月を中心に2度に分けて行う予定で、年度内には報告書をまとめる計画。同課は「ライチョウの個体数減少は他地域でも発生する恐れがある。原因を早期に究明することで、保護対策を速やかに検討していきたい」としている。

用語・ライチョウ
 全長約40センチの中型の鳥。本州中部の標高2,400メートル以上のハイマツ林帯や岩石帯に生息し、主に植物を食べている。羽色は、夏は雄が頭や背などが黒褐色、雌は翼と腹部中央が白いほかはほぼ黄褐色。冬は雄雌ともほぼ全身白色となる。かつては八ケ岳にも生息していたが、現在は絶滅したと考えられている。

(2004年4月20日付 山梨日日新聞)

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