2022.6.18 News / 芦安山岳館 /

石川直樹写真展 18日から芦安山岳館

人と自然 共生を活写

 世界の辺境から都市までを撮影し続けている写真家石川直樹さん(44)の作品を紹介する企画展「ヒマラヤとシェルパ」(南アルプス市、山梨日日新聞社、山梨放送主催)が18日から、同市芦安芦倉の南アルプス市芦安山岳館で開かれる。ヒマラヤとその麓で暮らす人々の表情をとらえた写真を展示。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録されている南アルプスを見つめ直す機会にもなりそうだ。

 標高8千メートルを超える山々が連なるヒマラヤと、山から恩恵を受けて文化を築いてきたシェルパの生活。日本から遠く離れた山だが、南アルプス市の担当者は「人と自然が共生していて、『エコパーク』の理念と合致する」として、「(企画展で)南アルプスの山々の麓で暮らす私たちも山の恩恵を受け、生活が形成されていることを伝えたい」と言う。

 石川さんは1977年、東京生まれ。高校2年の夏休みにインド、ネパールを一人旅したのを皮切りに、20歳で北米大陸の最高峰デナリに登頂。23歳の時には当時の最年少記録で世界7大陸最高峰登頂を達成している。都市から極地まで地球全体をフィールドに日常と世界を見つめ、作品を発表し続けている。この10年ほどは、ヒマラヤの8千メートル級の山も対象にしている。

 企画展では、エベレストのあるネパール・クンブー地方のシェルパの暮らしや、シェルパと一緒に登った山々の写真23点を展示する。市芦安山岳館の蔵書の中から、石川さんがこれまでに読んだ本やヒマラヤに関係する本を紹介。ヒマラヤの麓から登山するまでのプロセスを記録した映像も鑑賞することができる。

 企画展は来年3月5日まで。入館料は大人(中学生以上)500円、小学生250円。午前9時~午後5時。水曜休館(7月16日~8月31日は無休)。問い合わせは市芦安山岳館、電話055(288)2125。

石川直樹さんに聞く 一期一会フィルムにこだわり

 2001年に世界最高峰のエベレストにチベット側から初登頂した石川直樹さん。11年にネパール側から再び登頂した際、「(まだ行っていない)マカルーやローツェなど周囲の山々から見たエベレストはどんな姿なのか」との思いを抱き、以来、年に1回ほどのペースでヒマラヤ遠征を続けている。

 石川さんの写真が一般的な山岳写真と異なるのは、山の自然ではなく「自分と山との関わりを撮っている」点。山と調和して暮らすシェルパの村での営みから、山頂に至るまでの光景を一連の流れとして記録する。自らの軌跡をたどることにもつながり、「一つの旅が複数の旅になっていくような感覚がある」。

 普通に歩くことさえ厳しい8千メートル峰に石川さんが持って行くのは、少し大きめのフィルムを使う中判カメラ。装備は少しでも軽くするのが鉄則の山で、あえてフィルムカメラを使う人は他に見当たらない。「枚数に限りがあるから、左からも右からも撮って、念のためもう一度撮って、というようなことは一切できないし、間違ったら消すといった感覚もない」。一期一会を大事にする姿勢が、自分しか撮れない写真を生む要素の一つと語る。

 企画展の会場となる南アルプス市芦安山岳館について、「北岳の入り口。山との端境で生活の知恵を携えて生きるところに(シェルパと)共通性がある。(企画展では)そこに暮らす人々のことを思いながら山の存在を見てほしい」と話す。

 今月末には再び8千メートル級の山を目指しパキスタンへ出発する予定だが、帰国した際には、子どもたちへの読み聞かせイベントなどを開催したいという。

 「アイゼンやピッケルなど登山道具を紹介し、1カ月テントで暮らすとはどういうことか、どうやって雪山を登っていくのか、体験を深めるようなものにしたい。大人向けの登頂報告会もできたらいいと思っています」

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企画展「石川直樹 ヒマラヤとシェルパ」

(山梨日日新聞 2022年6月18日掲載)

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