農鳥岳

農鳥岳
 山梨県早川町と静岡県との境にあり、南アルプスの北岳、間ノ岳とともに白峰三山のひとつ。西農鳥岳は標高3,051メートル、東農鳥岳は標高3,026メートル。毎年、農業が始まるころ、この山の雪が、白鳥が首を伸ばした形に消え残る。農鳥が現れると苗しろに稲の種子をおろし、農牛が見えると大豆や小豆をまきつける。また秋の農牛が現れると秋農が始まるのだと、この山が見える村々の人たちは言っている。なお、この残雪はスキやクワなど農具の形に見えることもあるという。東農鳥岳には大町桂月の歌碑がある。1997(平成9)年、山梨百名山に選定。
南アルプスNET−農鳥岳
■ライチョウに出合う稜線
農鳥岳
農鳥岳
 「グルル」「グワ」。3,000メートルの稜線を歩いていると、突然の声に驚かされることがある。ライチョウだ。声は悪いが、目のふちに赤い化粧(雄)をした姿や動作は愛らしい。白峰三山の中でも登山者の少ない農鳥岳周辺は、ライチョウに出合う機会が多い。7月から8月にかけては、ヒナを連れた姿も見かける。
 農鳥岳へ直接登るには、早川町奈良田からの大門沢ルートがある。山梨百名山有数の登りだが、小鳥のさえずりに救われる。谷沿いはオオルリ、コルリ、ルリビタキ、コマドリ、ミソサザイ。尾根の樹林に入ってコガラ、キクイタダキ、ビンズイなどが美しい声を聞かせてくれる。稜線に出るとイワヒバリやホシガラス、そしてライチョウだ。
 生きた化石といわれ、氷河時代から生き続けてきた。冬は純白、夏は茶色の保護色に変わる。1955(昭和30)年、国の天然記念物に指定された。中央アルプスと八ケ岳は昭和30年代から40年代にかけて絶滅。今は北ア、南ア、白山など限られた高山だけに生きている。
 県内では70−73年にかけて本格的な調査が行われた。『やまなしのライチョウ』によると、確認された生息数は白峰三山29、仙丈ケ岳7、甲斐駒ケ岳4、鳳凰山3。合計43羽にすぎなかった。その後の調査はないが、残飯を狙って登ってきたキツネに襲われ、さらに危機的状況にある。
 農鳥岳は、白峰三山の一番南にある。西農鳥と東農鳥の2つのピークがあり、西農鳥が3,051メートル、三角点と大町桂月の歌碑がある東農鳥が3,026メートル。白峰三山は現在、北から北岳、間ノ岳、農鳥岳と呼んでいる。『甲斐国志』は、北岳を白峯、真ん中を間ノ岳、中ノ岳、または鳥の雪形が現れることから農鳥岳、今の農鳥岳を別当代としている。
 近代登山が始まると山名論争が盛んに行われた。農鳥岳に農鳥が出たり、間ノ岳にも見つかって混乱した。小島烏水の研究などから現在の名前が定着していった。
 白峰三山縦走は、広河原から北岳に登り南下するのが一般的。野呂川林道が開通する前は、鷲住山から野呂川に下り、荒川をさかのぼって農鳥小屋に出るルートがよく使われた。ペデの岩小屋、煙滝、三ツ瀑、熊ノ平など、年配者には懐かしい場所だ。 〈「山梨百名山」 山梨日日新聞社刊〉

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