南アルプス芦安山岳館/イベント・お知らせ


 ■マイペース 非日常の頂へ
 一歩一歩、自分のペースで頂上へ−。近年の登山ブームを背景に、登山が幅広い世代に親しまれている。山梨県内では社会人になってから登山を始めたミドル世代も多く、山岳会に入って知識や技術を身につけている。山に魅了されたミドルの日帰り登山に同行し、その思いを聞いた。

 「そろそろ出発しますか」。韮崎市内にある鳳凰三山の一つ、薬師ケ岳の中道登山口。県内の山岳会に所属する40〜50代の4人が集まり、ゆっくりとしたペースで歩き始めた。時刻は午前6時20分。無理のない計画で、雨具や防寒具、地図などの装備も万全だ。

心奪われた絶景

 「自分で計画を立て、頂上に着いた時の達成感は格別」。南アルプス市中野の自営業入倉利也さん(55)は登山を始めて7年。山にのめり込むきっかけとなったのは、友人に誘われて2012年8月に登った北アルプスの常念岳(長野県)。「とにかく快晴で山頂からの眺めは最高だった」と絶景に心を奪われた。

 しかし15年5月、北アルプス・唐松岳(長野、富山両県)で滑落。未熟さが生んだ事故だった。右足の骨を折る大けがを負い、麓まで救助隊に搬送された。隊員に感謝の言葉を伝えた際、掛けられた一言をずっと心に留めている。「あなたの住んでいる地域の山で、同じような事故が起きないよう貢献してください」。復帰後、県内の山岳会に入り、登山の基礎を学ぶようになった。

 現在は南アルプスや北アルプスなど各地の山に登るようになり、県内では山頂標識の設置や登山道整備の活動にも参加している。

「生涯の趣味に」

 一方、入倉さんとは別の山岳会に所属している甲府市中央2丁目の看護師名取有希さん(43)は、知人の誘いを受け、この日の登山に参加。09年に友人と登った富士山が最初の登山だったという名取さん。「学生時代からスポーツは苦手で嫌い。まさか登山をするようになるとは思っていなかった」という。自分自身のスキルを高めたいとの思いから、今月に県内の山岳会に入った。

 鳳凰三山や北アルプス・槍ケ岳(長野、岐阜両県)など県内外の高峰にも登り、足元に咲く花の名前を覚えるのも楽しみの一つになっている。「自分のペースで非日常空間を楽しめるのがいい。生涯の趣味として続けていきたい」
2018年7月18日付 山梨日日新聞掲載 『やまなしミドル』から