南アルプス芦安山岳館/イベント・お知らせ


 ■連載「エコパーク登録1年 南アルプスはいま」 <上>
観光効果、期待空回り 知名度向上へ周知課題 息長い取り組みが鍵

 「南アルプスがエコパーク(生物圏保存地域)に登録されたが、観光客に何か変わった様子はない気がする。いまひとつにぎわいが感じられない」。南アルプス市芦安地区の旅館業者でつくる「はたごの会」の小林岩美会長は山開きを控えた6月上旬、経営する「岩園館」の宿泊名簿を手にこう漏らした。

 南アルプスは昨年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)のエコパークに登録され、初めての夏山シーズンを迎えた。だが、県道南アルプス公園線の一部区間が土砂崩落で約1カ月半にわたり、通行止めになった影響もあり、シーズンを通じた宿泊者は低調に推移。地元の観光業者は、“エコパーク効果”で例年以上の人出を期待していただけに、落胆は大きかった。

半数「知らない」

北岳に登る登山者。エコパークの認知度は低く、登録効果を感じる地元観光業者はほとんどいない
北岳に登る登山者。エコパークの認知度は低く、登録効果を感じる地元観光業者はほとんどいない
 登山者や観光客が立ち寄る「道の駅しらね」(同市在家塚)の2014年度の利用者は4万6300人で、エコパーク登録前の13年度に比べ1万2505人減少した。南アルプスの歴史や山岳資料の紹介をしている南アルプス芦安山岳館(同市芦安芦倉)の利用者も同640人減の4049人だった。塩沢久仙館長は「来館者のほとんどがエコパークという言葉を知らないのが現実」と話す。

 登山者や観光客数の増加につながらない原因として、エコパークの知名度の低さを挙げる人は多い。南アルプス市が昨年5〜6月、市民を対象に行ったアンケートでは、回答のあった633人のうち、「エコパークを知っている」と答えたのは358人(56.5%)にとどまった。地元の住民でさえ、半数近くがエコパークを知らない状況が浮き彫りになった。

 他の自治体でも知名度の低さに頭を悩ませている。韮崎市で5月に開かれた、エコパークの活用などについて説明する住民向けの講演会。事前にチラシを配るなどして参加を呼び掛けていたが、定員200人に対して、集まったのは30人程度。大半は関係者だった。韮崎市商工観光課の担当者は「エコパークに対する市民の関心は低いと感じていたが、これほどまでとは…」と肩を落とす。

副読本に採用

 南アルプス市は「まずは市民の認知度を高めることが必要」として、次代を担う子どもたちへの周知に力を入れていくことを決めた。本年度から小学3、4年の「社会科副読本」に、南アルプスの山々の動植物などについて紹介するページを追加した。今後は櫛形山や伊奈ケ湖周辺での自然体験を学習プログラムに組み入れることも検討している。

 今年に入り、「北杜市南アルプスユネスコエコパーク地域連絡会」「南アルプスユネスコエコパーク韮崎市地域推進協議会」が相次いで設立された。いずれも、観光業者や地元NPOなどをメンバーとし、重点目標の一つにエコパークの周知を図ることを掲げる。年に数回の会議を開き、観光振興と自然保護の両立などについて意見を交わす。

 ユネスコエコパークの取り組みに詳しい横浜国立大環境情報研究院の若松伸彦さんは「エコパークは世界遺産と違って国内では知名度も低く、直接の観光客誘致にはつながらない」と指摘。その上で「周知が進み、その価値を分かる人が増えれば、観光客が増加するケースもある。短期的ではなく長期的な目でエコパークについて考えていかなければならない」と強調する。

 南アルプスがユネスコのエコパークに登録されてから12日で1年。現状や今後の課題を探った。
2015年6月11日付 山梨日日新聞掲載