南アルプス芦安山岳館/イベント・お知らせ


 ■南ア一期一会・山に寄り添う強い信念
「北岳肩の小屋」3代目 森本千尋さん

 南アルプス北部に位置する北岳周辺で、最も標高が高い場所にある「北岳肩の小屋」(標高約3000メートル)。その3代目として、小屋や登山者、南アルプスの自然を守り続けているのが森本千尋さん(33)だ。森本さんは「南アルプスの魅力は山深さと雄大さ。登山者には自然を大切にする気持ちを持って、安全に登山を楽しんでほしい」と話す。

小屋を訪れた登山者と話す森本千尋さん=南アルプス・北岳肩の小屋
小屋を訪れた登山者と話す森本千尋さん=南アルプス・北岳肩の小屋
 小屋が建てられたのは半世紀以上前。当時、広河原から北岳に向かう登山道沿いにある白根御池小屋の管理人をしていた千尋さんの祖父・録郎さんが、稜線(りょうせん)付近で相次いだ遭難事故を防ごうと小屋を開いた。千尋さんは「石や木材を毎日荷揚げ、天候に左右されながらやっとの思いで組み上げたと聞いている」という。

 「幼少時代からいずれは小屋で働くものだと思っていた」という千尋さん。幼いころから南アルプスに登り続け、大学卒業後、自衛隊に入隊。「父の還暦までには小屋に入ろう」と考えていたといい、24歳で山小屋の道に進んだ。

 現在、小屋は父・茂さん(67)と千尋さんの親子で管理。例年6月上旬〜11月上旬に営業し、夏山シーズン最盛期には小屋の定員150人を大幅に超える300人近くを迎える。北岳まで30分程度の場所にあることもあり、軽食や飲料水などを求めて立ち寄る登山者も多い。

北岳(奥)に最も近い場所に建つ北岳肩の小屋
北岳(奥)に最も近い場所に建つ北岳肩の小屋
 有事の際には遭難者の救助に当たることもある。北岳周辺の地形に精通し、体力がある千尋さんの元には骨折や低体温症などさまざまな救助依頼がある。そのため、普段からトレーニングは欠かさず、応急処置法の講習会にも参加している。

 「登山者と山の話で盛り上がるときには何より幸せを感じる。これからも南アルプスに寄り添いながら、小屋を守っていきたい」。そう話す穏やかな表情には、強い信念がにじみ出ていた。
2014年7月23日付 山梨日日新聞掲載