南アルプス芦安山岳館/イベント・お知らせ


 ■特集・南アルプスエコパーク登録
3000メートル峰連なる自然の宝庫
 山梨、長野、静岡3県の10市町村が目指してきた「南アルプス」の国連教育科学文化機関(ユネスコ)生物圏保存地域(エコパーク)登録が決まった。エコパークは、自然の保全と利用の調和を目的に1976年に創設された制度。南アルプスは、標高が国内第2位の北岳(3193メートル)や同3位の間ノ岳(3190メートル)など3千メートル級の山を有し、キタダケソウ、ライチョウなどの貴重な動植物が生息する自然豊かな山脈で、国立公園指定50周年を迎えた節目の年での登録となった。世界自然遺産での落選からエコパーク登録までの経緯、南アルプスの主な山などを紹介する。

官民一体、環境保護へ機運づくり
 エコパークは手つかずの自然の保護を原則とする世界自然遺産と異なり、生態系の保全と一定の経済活動などの両立を目指す地域として、ユネスコが認定する。国内では1980年に、志賀高原(群馬・長野)や屋久島(鹿児島)、白山(富山、石川、福井、岐阜)、大台ケ原・大峰山(三重、奈良)、2012年に綾(宮崎)が登録されている。今回は南アルプスと併せ只見(福島)が新たに選ばれ、国内は計7カ所となった。

エコパーク登録までの経過
 南アルプスは2003年、世界自然遺産の国内候補地の検討対象となったが、富士山とともに最終候補地からは漏れた。その後、山梨、長野、静岡県10市町村は南アルプスの世界自然遺産登録を目指す協議会内にエコパーク調査研究部会を設置。「世界遺産の前段階」として、まずエコパーク登録を目指すことにした。説明会の開催、保護団体や地域住民と連携したライチョウ保護を進め、機運を高めるための対外的なPR、また各地元での高山帯での学術調査など環境整備にも力を入れてきた。

 昨年4月に推薦書の基となる申請書案を文部科学省に提出。同9月、同省の日本ユネスコ国内委員会が南アルプスの推薦書をパリのユネスコ本部に提出した。

 今年4月に生物圏保存地域国際諮問委員会がユネスコ人間と生物圏(MAB)国際調整理事会に登録が適当とする「承認」の勧告を行い、南アルプスの登録は事実上決まった。

南アルプスエコパークの登録地域
南アルプスエコパークの登録地域
(1)北岳(3193メートル) 南アルプス市
 日本第2の高峰。白根三山の一番北に位置する。キタダケソウをはじめとする数多くの高山植物が生育し、間ノ岳から南アルプス南部への縦走路の起点となっている。

(2)間ノ岳(3190メートル) 南アルプス市、早川町、静岡県
 標高は日本第3位。白根三山の中央に位置する。広い稜線上などにはシナノキンバエをはじめとする単一植物を見ることができる。

(3)仙丈ケ岳(3033メートル) 南アルプス市、長野県
 穏やかな山容でその優雅な姿は「南アルプスの女王」と呼ばれる。頂上付近には三つのカールが見られ、富士山、八ケ岳、奥秩父をはじめ、中央、北、南アルプスを見渡せる。

(4)農鳥岳(3026メートル) 早川町、静岡県
 白根三山の一番南。山頂は西農鳥岳、農鳥岳の2峰からなる。6月下旬、山頂の東面に白鳥のような雪形が現れ、農事暦の目安とされたのが名前の由来。

(5)甲斐駒ケ岳(2967メートル) 北杜市、長野県
 甲府盆地の西、南アルプスの最北端にピラミッド形にそびえる。その特異な山容から修験道として駒ケ岳講の信仰の山としてあがめられてきた。黒戸尾根を登る登山道沿いには、数多くのほこらや剣がたてられている。

(6)鳳凰三山 北杜市、韮崎市、南アルプス市
 薬師岳(2780メートル)、観音岳(2841メートル)、地蔵ケ岳(2764メートル)の三山を主とする山塊。森林限界を越えた稜線(りょうせん)は白い花こう岩の砂地に覆われている。

(7)塩見岳(3047メートル) 長野県、静岡県
 南北に長い南アルプスの中心部に位置し、山頂は西峰と東峰に分かれている。ドーム形の独特な山容が特徴。太平洋が見えることから塩見岳という名がついた。

(8)荒川三山 長野県、静岡県
 東から西に悪沢岳(3141メートル)、中岳(3083メートル)、前岳(3068メートル)の3連峰からなる。はっきりとした氷河地形が残る日本最南端の場所で、複数のカールが存在。お花畑も見られる。

(9)赤石岳(標高3120メートル) 長野県、静岡県
 三方に尾根を張り出したどっしりとした山容で、国内で最高地点の一等三角点が設置されている。山の名は赤石沢に多い赤色チャート岩盤に由来する。

(10)聖岳(3013メートル) 長野県、静岡県
 3000メートル級としては日本最南端に位置する。聖沢が肘を曲げたような形になっていることから、「ひじ折る」が転化し「ひじり」となったとされる。

三つの区分−生態系保全と経済両立目指す
 エコパークは「核心地域」「緩衝地域」「移行地域」の三つの区分に分類される。それぞれどんな特徴があるのか−。

核心地域
【核心地域】
 国立公園の特別保護地域など自然環境を厳重に守らなければならず、法的にも厳しく保護され、長期的に保全されている自然豊かな地域。南アルプスでは3000メートル級の山々の山岳景観や原生的な自然環境があり、貴重なライチョウやキタダケソウなどの動植物の生息地。南アルプスを構成する山のおおむね中腹より上が地域となる。
緩衝地域
【緩衝地域】
 核心地域の周辺または隣接する地域。適切な保護、管理をしながら、環境教育、調査研究活動や観光、レジャーに利用できる。
 自然の保全、持続可能な利活用への理解の増進、将来の担い手育成などを行う、自然との共生を目指す地域とされる。甘利山(韮崎市)、櫛形山(南アルプス市)、七面山(早川町、身延町)など南アルプス周辺の山々が含まれる。
移行地域
【移行地域】
 自然環境と調和した農業や歴史、文化を生かしたエコツーリズムなどが行われ、人が暮らしを営み、さまざまな社会活動や企業活動ができる。北杜市で見ると豊かな水源を生かした稲作地域、南アルプス市では農林業で観光客をもてなす麓の地域などが含まれる。
2014年6月14日付 山梨日日新聞掲載