南アルプス芦安山岳館/イベント・お知らせ


 ■白銀のピラミッドに挑む
甲斐駒ケ岳・黒戸尾根ルート 山梨日日新聞記者登山ルポ

8合目から上の最も険しい「核心部」に向かって進む古屋寿隆さん。花こう岩の岩肌があらわになっている
8合目から上の最も険しい「核心部」に向かって進む古屋寿隆さん。花こう岩の岩肌があらわになっている
雪の上にテントを張ってビバーク。雪山ではアイゼンやピッケルなどの道具が欠かせない
雪の上にテントを張ってビバーク。雪山ではアイゼンやピッケルなどの道具が欠かせない
山々が広がる山頂。写真奥にそびえるのは日本第2位の高峰・北岳=いずれも甲斐駒ケ岳
山々が広がる山頂。写真奥にそびえるのは日本第2位の高峰・北岳=いずれも甲斐駒ケ岳
 山頂まで約2200メートルという日本最大級の標高差を持つ甲斐駒ケ岳・黒戸尾根ルート。頂上からの眺めは「日本アルプスで一番奇麗(きれい)」(深田久弥)というが、雪と急峻(きゅうしゅん)な岩場が行く手を阻む。下界はすっかり春の陽気となった3月、県山岳連盟副会長の古屋寿隆さん(62)と“白銀のピラミッド”に挑んだ。

 11、12の両日、竹宇駒ケ岳神社の駐車場(北杜市白州町)から入り、黒戸山を経て、山頂(2967メートル)を目指す行程を往復した。「端正なピラミダルな山容から、アルパインクライマーなら一度は登頂を憧れるルート」(古屋さん)という。頂への思いは募った。

 1日目は深い森を抜け、七丈小屋を目指す。8時間歩くが、小屋に着けずに5合目でビバーク。ガスコンロで雪を溶かし、その水でコーヒーを飲む。無音の中でまどろむ。

 翌朝、出発から2時間半で最も険しい「核心部」に到達。足が安定するよう、ピッケルで雪を削ってはアイゼンを蹴り込む作業を繰り返す。ピークに人はおらず、ただ山々が広がっていた。

 下山では携行したザイルを張りながら、慎重に下降した。2日目の行動は約12時間。それでも古屋さんは「ああ、また登りたいね」と笑う。

 下山後に仰ぎ見た雲の向こうの甲斐駒ケ岳。春待つピラミッドは、登る前よりきれいに見えた。
2013年3月24日付け 山梨日日新聞掲載