南アルプス芦安山岳館/イベント・お知らせ


 ■【連載】南アルプス 自然と人[6]
姿消したライチョウ 目撃の“朗報”に生存願う

 高山帯に生息する代表的な鳥類・ライチョウ。南アルプスはその世界最南端の生息地だ。氷河期に分布を広げ、時代の終わりとともに高山に取り残された「氷河期の遺存種」は、高山植物キタダケソウと並ぶ南アルプスきっての“人気者”。しかし、絶滅危惧きぐ種に指定され、近年は生存が危ぶまれている。

薬師岳方面を見上げ、ライチョウに思いをはせる小林賢さん=南アルプス・南御室小屋前
薬師岳方面を見上げ、ライチョウに思いをはせる小林賢さん=南アルプス・南御室小屋前
 薬師岳小屋と南御室小屋を経営する小林賢さん(61)は長年、鳳凰三山(薬師岳、観音岳、地蔵ケ岳)でライチョウの姿を見守り続けてきた。広い山間地で登山道から目撃できる可能性はごくわずか。それでも40年という年月をかけて追った写真が韮崎市の自宅には数多くある。

 一昨年1月、薬師岳で登山者によってライチョウの姿が撮影されたことが、うれしいニュースになった。南アルプスでは白根三山、仙丈ケ岳、甲斐駒ケ岳、そして鳳凰三山などが生息地。ただ、2004年の調査では鳳凰三山での生息を確認できず、絶滅の可能性が指摘されていたからだ。小林さんも昨年、足跡など生活の痕跡を確認している。

 個体数の減少をめぐっては、さまざまな指摘がある。キツネなど天敵の増加、シカなど低山帯動物の高地進出による生態環境の変化、病原菌の感染。さらに、温暖化によって生息地が縮小し、絶滅しかねない、と指摘する専門家もいる。

 「われわれ人間の前に姿を見せてくれとは言わないから、どこかで元気に生きていてほしい」。1年の半分を山小屋で過ごし、ライチョウと同じ高山帯で生活する小林さんの願いだ。

ライチョウ(南アルプス芦安山岳館提供)
 ●ライチョウ 全長約40センチのキジ目の鳥。高山のハイマツ林などに生息し、主に植物の葉や芽などを食べる。羽毛は夏は褐色、冬は全身白色に変わり、国内では本州中部の北アルプスや南アルプスの限られた高山帯に約3千羽が生息すると推定されている。県のレッドデータブックで、絶滅の可能性が極めて高いとされる絶滅危惧1A類に指定されている。(写真は南アルプス芦安山岳館提供)
2010年7月21日付 山梨日日新聞掲載